2012 Fiscal Year Annual Research Report
ドメイン構造をもたない天然変性タンパク質群に対する構造機能相関解析
Publicly Offered Research
Project Area | Target recognition and expression mechanism of intrinsically disordered protein |
Project/Area Number |
24113706
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
相澤 康則 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 講師 (90418674)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | タンパク質 / ペプチド / 構造機能相関 / ゲノム / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成23年度までに、49種類の機能未知ヒト全長IDP候補のクローニンクが完了していたので、本年度はまずこれら全長IDP候補の細胞内安定性の評価から始めた。全長IDP候補を強力なCMVプロモーターを用いてヒト培養細胞内で発現させたにもかかわらず、半分以上の全長IDPはウェスタンブロッティングで検出できなかった。そこにプロテアソーム阻害剤であるMG132を添加すると、多くの全長IDP候補の安定性が高まった。この結果から、IDPタンパク質は細胞内で単独で存在していることは希であり、機能を発揮するためには翻訳直後からその安定性を確保するための相互作用相手分子を必要とすることが強く示唆された。 そこで次に、各種全長IDPが細胞内で結合する相手タンパク質の同定を試みた。N末端あるいはC末端をFLAGタグ化した全長IDPをヒト培養細胞内で発現させ、抗FLAG抗体で免疫沈降を行った結果、これまでに6種類の全長IDPに結合する相手タンパク質がSDS-PAGEで確認できた。得られたゲルバンドの質量分析法を試みたところ、2種類の全長IDP(以後IDP44とIDP7)の細胞内相互作用相手をそれぞれ4種類と1種類特定できた。IDP44結合タンパク質との相互作用はその後、プルダウンアッセイと免疫染色によって確認できている。これら相互作用相手はそれぞれ小胞体、ミトコンドリア、核の膜上に存在するタンパク質であることから、現在IDP44は新規のオルガネラ間情報伝達因子であることを仮説に、その機能解析を進めている。一方、IDP7の結合タンパク質は酸化ストレスに関わる主要タンパク質酵素であることが明らかになった。相互作用相手が同定できたこれら2つのタンパク質についてさらに各種欠失変異体を作成し、相互作用に関わるペプチド部位の特定を現在試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度中に、組換えタンパク質を用いたIDP相互作用の熱力学的解析を予定していたが、実際は実施できなかった。この原因は、細胞実験に予定以上の時間と労力がかかったためである。しかし、IDP44とIDP7に対して24年度に同定できた相互作用相手タンパク質はいずれも細胞内の主要なシグナル伝達経路において中心的な機能を果たしているものであることから、本年度の細胞実験の成果自体は高く評価できる。来年度の研究によって新規の機能性全長IDPの発見に繋がる重要な成果が得られたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
全長IDPによる機能発現の原理を理解するためには、全長IDPの機能発現メカニズムの事例を増やすと共に、その機能発現の鍵となるタンパク質構造特性を明らかにする必要がある。そのため25年度は引き続き、より多くの種類の全長IDPを特定し、その生体内機能を解明するだけではなく、その機能と構造の関係性をインビトロの実験系で解析しなければならない。そこで私達は来年度、発見したIDP7と、その結合タンパク質である酸化還元酵素の例を対象に、相互作用の構造機能相関を探究する。具体的には、IDP7の各種変異体を作成し、酵素反応への影響を速度論的に調べると共に、IDP7変異体と酵素の親和性を熱力学的に解析する予定である。
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Research Products
(4 results)