2012 Fiscal Year Annual Research Report
重水素化中性子小角散乱を用いた天然変性タンパク質による揺らぎ構造の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Target recognition and expression mechanism of intrinsically disordered protein |
Project/Area Number |
24113709
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 正明 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (10253395)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 中性子小角散乱 / 重水素化 / コントラスト変調法 / PA28 |
Outline of Annual Research Achievements |
小角散乱法はタンパク質の溶液中における構造及び構造変化を測定するための有力な手法である。加えて、結晶構造解析では見ることができない不定形領域も散乱に反映されるため、天然変性領域等の構造解析には有力な手法である。ただし、タンパク質複合体における特定部分(天然変性領域など)の構造を観測するためには、中性子の特徴を生かした試料重水素化と溶媒コントラスト変調法が必要である。しかしながら、これらを組み合わせた手法は解析法は未開発である。 今年度は、これらの問題を解決しタンパク質複合体における不定形部の構造解析法を開発するためにProteasome Activator 28(PA28)のloop領域の配位の解析を行った。PA28は、2つのSubunit(α、β)が7つ会合したそれ自身がタンパク質複合体であるが、その3次元構造は解明されていない。α-subunitのみからなるホモオリゴーマーは結晶構造解析が行われ円錐台形状であることが判明している。野生型のPA28も同様の構造をしていると考えられるが、野生型PA28内における①α、β-Subunitの比率、②α-Subunitが持つ長いloop領域(不定形、結晶構造解析では見えていてない)の配位、などの詳細構造は全く分かっていない 本研究では、をα-subunit鑿を重水素化したPA28を用意し、溶媒の重水比率を変えて測定を行った。その結果、「PA28内におけるα-subunitとβ-subunitの比率は3:4」であることを明らかにし、計算Simulationと測定結果の比較から、問題の「loop領域はPA28の上部にある内部空洞への入り口を封鎖する形で存在している」ことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はタンパク質中における特定部位、特に不定形領域の構造解析手法の開発を目指していた。今回の成果で重水素化とコントラスト変調法を用いた測定を行い、さらにモデル構造を設定したSimulationと組み合わせることで不定領域(loop)の配位を明らかにすることができた。これは、溶媒散乱長変化(重水比率変化)に対する溶質のコントラストの変化が重水素化領域と軽水素化領域で大きく異なることと、その変化がloopの配位に対して敏感にあるような実験系を構築できたからである。また、開発したいるモデル構造からの散乱曲線の計算手法も周りの水の効果取り込み、高速化などのが進んでおり、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、計画通りに測定手法の開発、解析手法の開発は進んでいる。今後は他のタンパク質複合体にも適用させ、より手法の精密化・一般化をはかっていきたい。 具体的には、タンパク質研究としては、PA28 に関しては単独でなく20S Proteasomeと複合体を形成した時のloop領域の配位解析、水晶体タンパク質βクリスタリンの振動構造(2つのドメインが不定形いchainで結合している)、ヌクレオソームにおけるヒストン・DNAの部分構造解析を刊上げている。また、解析手法は、タンパク質構造変調に対応する散乱曲線の計算手法の開発。特に不定形領域の散乱曲線の計算手法の精密化を進めていく。
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Research Products
(4 results)