2012 Fiscal Year Annual Research Report
天然変性蛋白質の細胞内解析に向けたペプチド分子のin‐Cell NMR計測
Publicly Offered Research
Project Area | Target recognition and expression mechanism of intrinsically disordered protein |
Project/Area Number |
24113720
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
池谷 鉄兵 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (30457840)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | in-cell NMR / peptide / structure |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内のダイナミクス解析では,大腸菌を用いた系で新たな知見を得た.これまでのGB1,TTHA1718蛋白質を用いた予備的実験から,in-cell NMRによるT1, T2緩和実験のデータが,in-vitroの系と比較してT1緩和時間が上昇しT2緩和時間の減少が見られた.さらに,これらのデータは,理論カーブから大きく外れるという結果を得ていた.そこで,本年度はこの結果を踏まえ,理論値と一致しない点をより詳細に解析するためにDEST法と呼ばれる新しい緩和測定を行った.現在暫定的な結果として,標的分子が細胞内で何らかの巨大分子と相互作用している可能性が示唆された.今後はこのデータの質の向上のための測定法の改良と伴に,新たなモデリング手法適用することにより,より詳細な解析を進める. ペプチド分子を用いたin-cell NMR計測では,分子の運動性や物性が詳細に解析されている5種類のペプチド試料を選択し,大腸菌により大量培養を行った.5種類のうち1つのペプチド分子については,大腸菌を用いた系とヒト培養細胞(HeLa)を用いた系の2つのin-cell NMR測定を行った.しかしながら,いずれも解析に十分な感度のシグナルを得ることができず,今後試料調製法の見直しを検討している.また残りのペプチド分子については,スモールスケールでの発現の確認まで進行した.今後は安定同位体試料を用いた大量発現,精製を進める予定である. Sf9細胞を用いたin-cell NMR計測において,3次元NMRスペクトルの測定に成功し,78%の蛋白質主鎖原子の化学シフト帰属を達成した.本成果は,学術論文誌上に発表した(J.Am.Chem.Soc., 135(5), 1688-1691). 生物物理学会誌にin-cell NMR測定から分かる蛋白質の細胞内動態に関するレビューを報告した(生物物理 53, 76-81).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NMR計測に必要なペプチド試料の調製では,大腸菌を用いた系でin-cell NMR測定を行ったが,背景シグナルが非常に大きく,標的分子由来のシグナル感度が著しく低かったため,現在,試料調製の再検討が必要な状況にある.ヒト培養細胞を用いた系では当初予定よりクローニングに時間を要し,細胞試料の取り扱いに関して十分な条件検討ができていない.これによりNMR測定の条件検討も,当初計画した予定よりやや遅れていることは否定できない.しかしながら,現在5種類のペプチドすべてについてクローニングに成功し,発現確認もできていることから,今後は,細胞への導入方法の検討とin-cell NMR測定の条件検討に集中できる.これにより,次年度はいっそうの研究の進展を加速可能である. 大腸菌を用いた分子の運動性解析では,DEST法を用いた緩和解析により,従来のT1,T2緩和実験では,理論的に解釈できない問題の解決への方向性が示せた点は大きな進展である.今後は,部位特異的安定同位体試料を用いた測定や,1D DEST法の測定,およびデータモデリング法の改良により,より明確な解釈が可能になると期待できる. 以上の観点より,本課題の1年目の自己評価は,当初申請者が想定していた進展度合いと比較して「やや遅れている」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内での蛋白質のダイナミクス解析では,本年度DEST法の計測に成功し,標的蛋白質が細胞内の巨大分子と相互作用している可能性を示唆する結果を得たが,現在のデータはまだ信号強度が弱くS/N比が高くないため,高精度の解析が不可能である.したがって今後は,部位特的安定同位体標識試料の作成による感度の向上,1D DEST法の測定,およびモデルフィッティングアルゴリズムの改良により,より高精度のデータモデリングを進め,蛋白質の細胞内での運動性を詳細に解析する. ペプチド分子を用いたin-cell NMR計測では,現時点で解析可能なスペクトルを得ることが出来ていないことから,CPP(Cell Penetrate Peptide)を使った細胞導入法を再度詳細に検証する.また,SLO蛋白質を用いて細胞膜への孔を形成させることで標的分子を細部内に組み込む別の手法も検討する.さらに,細胞培地の循環システムを用いてNMR計測することで,細胞寿命を大幅に伸ばす新規手法も提案されており,この手法の応用も検討する.一方で,現在1種類のペプチド分子のみNMR計測まで進んでいる状況にあるため,残り4種類のペプチド分子についても解析を進め,in-cellとin-vitroのNMR測定を行う.2次元HMQCスペクトル上でin-cellとin-vitroのデータに優位な差が見られた場合は,三重共鳴スペクトルとNOESYスペクトルを行い,立体構造解析を行う.加えて,これらペプチド分子についても上記の緩和測定を試みる.
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[Journal Article] High-Resolution Heteronuclear Multidimensional NMR of Proteins in Living Insect Cells Using a Baculovirus Protein Expression System2013
Author(s)
J. Hamtsu, D. O’Donovan, T. Tanaka, T. Shirai, Y. Hourai, T. Mikawa, T. Ikeya, M. Mishima, W. Boucher, B. O. Smith, E. D. Laue, M. Shirakawa, and Y. Ito
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Journal Title
Journal of the American Chemical Society
Volume: 135
Pages: 1688-1691
DOI
Peer Reviewed
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