2012 Fiscal Year Annual Research Report
複製ポリメラーゼδによる複製フォークの安定化機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Functions of non-coding DNA region for genome integrity |
Project/Area Number |
24114509
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
廣田 耕志 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (00342840)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 複製ポリメラーゼδ / DNA複製 / DNA損傷 / 非コードDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
高等真核生物の非コードDNA領域には、複製脆弱部位が多く存在する。複製脆弱部位は、以下の2つの現象によって複製が完了しにくくなることで発生する。(1) 反復配列や鋳型鎖上のDNA損傷による複製の停止。(2)複製オリジン及びドーマントオリジンの密度の低い部位での複製不完了。DNA損傷による複製の停止は、損傷乗越え機構によって解除される。これまでのドグマとして、複製ポリメラーゼは損傷部位にヌクレオチドを挿入できず、他の特殊なポリメラーゼが損傷乗越えを行うと信じられてきた。申請者はこれまでに、ポリメラーゼδ自身が損傷乗越えを行い、複製フォークの安定化に寄与することを見いだしている。反復配列による脆弱部位での複製フォークの安定化にも、複製ポリメラーゼδが関与する予備的知見を得ている。一方、ドーマントオリジンは、複製が停止やオリジン密度の低い部位での複製不完了のバックアップの複製起点となることが知られている。本研究では複製ポリメラーゼδに着目し、DNA損傷の乗越え修復やドーマントオリジン活性化機構との関係について解析を行い、複製ポリメラーゼδによる脆弱性回避機構についてDT40細胞を用いて解析した。 今年度の成果として、(i)ポリメラーゼδによる損傷乗越えをin vivo, in vitroの両実験系で証明した。(ii)生化学の損傷乗越えの実験系を完成した。(iii)複製脆弱部位を人工的に染色体上に形成して、脆弱部位での不安定性を定量するアッセイ系を確立した。(iv)複製ポリメラーゼδと損傷乗越え用のポリメラーゼPolH, PolZの3重変異体が致死である事を突き止め、複製ポリメラーゼδは既知の損傷乗越え機構と相補的関係にある事を突き止めた。来年度は、この致死の原因が損傷乗越え機能の更なる低下によるものであるか、DNAファイバー実験などで、検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複製ポリメラーゼδの精製ホロエンザイム(野生型酵素と変異型酵素)やアッセイ系を完成させ、in vitroの損傷乗越え活性の測定に成功し、p66と呼ばれるサブユニットが損傷乗越えに重要な働きをする事を突き止めた。この結果は、遺伝子破壊細胞の表現型によく一致する結果であった。 さらに予想外の結果として、複製ポリメラーゼδと既知の損傷乗越え経路の遺伝的関係を調べると、複製ポリメラーゼδは既知の損傷乗越え経路と相補的関係であり、バックアップとしてゲノムの安定維持に寄与している事がわかった。 複製脆弱部位を人工的に作製する手法も完成した。この手法では人工繰り返し配列を、標的部位に導入し、1~2週間の細胞培養後にシーケンス解析する事で、ゲノム不安定化に伴う欠失や変異を検出する事ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年までの研究進捗を受けて、以下の3点の実験を行う。 (1)複製ポリメラーゼδ/PolH/PolZの3重破壊細胞の致死性が損傷乗越え機能の更なる低下によるものであるのか?DNAファイバー実験などで検証を行う。 (2)複製脆弱部位での安定化機構での複製ポリメラーゼδの働きを検証し、既知の損傷乗越え経路の寄与と比較を行う。 (3)ドーマントオリジンの活性化にかかわる変異体を作製し、複製ポリメラーゼδの変異体との2重破壊など行い、ゲノム安定化における遺伝的関係を明らかにする。
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