2012 Fiscal Year Annual Research Report
卵母細胞核小体によるヘテロクロマチン確立機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Functions of non-coding DNA region for genome integrity |
Project/Area Number |
24114510
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大串 素雅子 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (50437505)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 卵母細胞 / 核小体 / 哺乳類 / 生殖細胞 / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
核小体はタンパク質合成を担うリボソーム構築に関わる細胞小器官として古くから知られているが,近年それ以外の機能も示唆されておりその構造に含まれる成分・役割については不明な点が多い。我々は核小体成分のないマウス卵母細胞は受精後のクロマチン構築に異常が生じることを明らかにし,卵母細胞核小体がクロマチン構築を制御することでゲノムの安定な伝播,染色体の構造維持に関与している可能性を示唆した。本研究では卵母細胞核小体に存在するRNA を同定し受精後のクロマチン構築制御に関与する因子を発見することを最終的な目標としている。 今年度は卵母細胞の核小体成分を同定したのち機能解析する上で必須となる基本的な系の開発を試みた。通常,哺乳類の細胞を用いてタンパク質・RNAの機能解析を行う際,十万~百万個レベルのの細胞数が必要とされる。しかし,マウス卵母細胞は一個体から約30~50個しか採取できず圧倒的な材料不足に悩まされる。そこで,体外で無限に増殖し,あらゆる細胞に成りうる能力を持つ胚性幹(ES)細胞から卵母細胞を誘導し,卵母細胞を自在に大量に生み出せる系を確立することを共同研究で試みた。第一ステップとして共同研究者たちとともにマウスES細胞を試験管内で始原生殖細胞様細胞へと分化させたのちマウスの卵巣に移植し卵母細胞の分化誘導に成功した。この系をさらに発展しES細胞から卵母細胞を完全に体外で誘導できれば哺乳類卵母細胞を大量に容易に作出できる。この系の確立により本研究における卵母細胞核小体の構成因子の機能解析も確実に行えるようになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は卵母細胞の核小体成分を同定後に機能解析する上で必須となる基本的な系の開発をを試みるので手一杯になってしまい,卵母細胞核小体を構成するRNA成分の同定・機能解析が進まなかった。 マウスES細胞から始原生殖様細胞へと分化させたのち卵巣へと移植することで卵母細胞を誘導する系を共同研究により確立できたのは評価できる点であるが,実際本研究でこの系を使用するためには卵巣に移植せずに完全に体外でES細胞から卵母細胞を作出する系の確立が必須となってくる。ES細胞から分化誘導された始原生殖様細胞は胎児卵巣由来の体細胞と共培養することで卵母細胞へと分化する。この細胞を体外で発育させれば発生能力を備えた哺乳類卵母細胞を体外で作出できるはずである。1996年にEppigとO'brienによりマウス卵母細胞の体外発育法が報告されているが (cf. Biol Reprod, 1996, 54, pp.197-207.),他研究室から追試の報告がない。実際我々もこの報告に従い卵巣内の原始卵胞由来卵母細胞を体外発育培養し産仔作出を試みたがうまくいかなかった。ただ,ある程度発育が進んだ二次卵胞由来卵母細胞を体外で発育させたのち体外成熟・体外受精を行い産仔を得ることには成功している。この系の開発に手こずり研究進捗が遅れているが哺乳類卵母細胞におけるタンパク質・RNA成分の機能解析につきまとう材料不足の根源的な解決につながることは間違いないので後悔はない。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な系の確立としてES細胞から卵母細胞を体外で作出する系を確立することを本年度も継続して行う。また,この研究と平行し卵母細胞核小体に存在するRNA成分の同定を東京大学大学院総合文化研究科 の太田教授との共同研究により行う。さらに,哺乳類卵母細胞の核小体成分が受精後のクロマチン構築に関わることからクロマチン構築の専門家であるOxford大学のKim Nasmyth教授と共同研究を開始することとした。以上の研究体制により確実に哺乳類卵母細胞の核小体に含まれるRNA成分を同定し,受精後のクロマチン構築における機能を解析していく。
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