2012 Fiscal Year Annual Research Report
高CO2環境下のイネの炭素・窒素栄養バランス高次統御に関わる窒素情報伝達系の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Comprehensive studies of plant responses to high CO2 world by an innovative consortium of ecologists and molecular biologists |
Project/Area Number |
24114702
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
早川 俊彦 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60261492)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝子 / シグナル伝達 / 植物 / 生理学 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、OsACTPK群に着目して、主要作物かつ好アンモニウム性のイネの根でのアンモニウムの吸収・同化調節に関わる情報伝達系分子実体の解明を目指すとともに、それらの高CO2環境下での生育とC/Nバランス統御への寄与を評価することで、植物の高CO2応答の理解を目指す。本年度は、OsACTPK1に関して研究を進めた。 (1) OsACTPK1のイネ根組織分布解析とTos17挿入OsACTPK1遺伝子破壊(-KO)イネの機能相補試験 OsACTPK1遺伝子の自己プロモーター-cDNA-レポーター遺伝子(sGFP, GUS)のキメラ遺伝子コンストラクトを、日本晴とOsACTPK1-KOイネに導入し、現在、形質転換体を作成している。また、これらのキメラ遺伝子のイネ培養細胞での一過的発現解析から、充足濃度の外来アンモニウムへの応答発現とOsACTPK1-sGFPの核とサイトゾルへの両局在が確認された。 (2) 通常大気CO2と高CO2の条件下で、不足・充足・過剰濃度のアンモニウムを供給したOsACTPK1-KOイネと対照系統の幼植物の表現形比較 通常大気CO2・過剰アンモニウム下のOsACTPK1-KOイネでは、対照系統のOsACTPK1遺伝子非破壊イネ分離系統と比較して、地上部と根の乾物重は減少して、生育が阻害された。しかし、高CO2・過剰アンモニウム下のOsACTPK1-KOイネでは、対照系統と比較して、上記の生育阻害を受けず、特に地上部の乾物重の顕著な増加が認められた。この際、高CO2・過剰アンモニウム下のOsACTPK1-KOイネの地上部では、全窒素と全炭素の蓄積量が顕著に増加した。高CO2・過剰アンモニウム下のOsACTPK1-KOイネにおいては、炭素骨格供給量増加により余剰吸収アンモニウムが十分に同化されて、地上部の生育が促進された可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
OsACTPK1のタンパク質リン酸化機能解析に必要な組換え(r)OsACTPK1とACTドメイン欠損rOsACTPK1の可溶性タンパク質を、大腸菌内で大量発現させ、高度に精製する実験系の構築が、発現タンパク質の不溶化や凝集等により困難を極めた。しかし、時間は要したが、タンパク質リン酸化活性を有する可溶性の上記組換えタンパク質の調製に成功し、現在比較解析とエフェクター分子の探索を進めている。本年度の研究計画のOsACTPK1の相互作用因子・被リン酸化因子の探索は遂行できなかった。また、通常大気CO2と高CO2の条件下で、不足・充足・過剰濃度のアンモニウムを供給したOsACTPK1-KOイネと対照系統の幼植物の表現形比較においても、アンモニウム・アミノ酸含量、重窒素標識Nの吸収・器官分配、N吸収同化系・関連C代謝系酵素・タンパク質群の比較解析までは行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
組換えOsACTPK1群の大腸菌内大量発現・高度精製系及びこれらの標品を用いたin vitroでのタンパク質リン酸化活性測定系は構築したので、OsACTPK1のタンパク質リン酸化活性制御機構を詳細かつ効率的に解析可能と考えられる。また、OsACTPK1遺伝子の自己プロモーター-cDNA-レポーター遺伝子のキメラ遺伝子導入形質転換イネ(日本晴とOsACTPK1-KOイネ)を作成中であり、OsACTPK1のイネ根組織分布解析とOsACTPK1-KOイネの機能相補試験は遂行可能と期待される。 平成25年度には、平成24年度の研究計画を継続するとともに、平成25年度の研究計画を遂行する。特に、イネ根アンモニウム吸収調節と高CO2・過剰アンモニウム供与下のイネ生育に影響を及ぼし得ることが示唆されたOsACTPK1に関しての研究を進め、同新規リン酸化タンパク質のC/N情報感知機能と情報伝達能の評価及び通常大気CO2濃度下と高CO2濃度下のイネにおけるN吸収・同化上の機能と体内C/Nバランス調節上の重要性の評価解析を重点的に進める。
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