2012 Fiscal Year Annual Research Report
葉緑体分布パターン決定における二酸化炭素の役割
Publicly Offered Research
Project Area | Comprehensive studies of plant responses to high CO2 world by an innovative consortium of ecologists and molecular biologists |
Project/Area Number |
24114707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高木 慎吾 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10192626)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 葉緑体 / 二酸化炭素 / 定位運動 / シロイヌナズナ / 葉肉細胞 |
Research Abstract |
シロイヌナズナ柵状組織葉肉細胞の葉緑体は、弱光下では細胞の上下面に(集合反応)、強光下では側面に集まる(逃避反応)。また、暗黒下では細胞の背軸側(底面)に集まる暗黒位を示す。葉の背腹性確立に関与する転写因子の変異株を用いた解析から、暗黒位は、背腹性に従った細胞の極性に依存することがわかった。一方、孔辺細胞外への陰イオン流出に必須の役割を果たすSLAC1を欠くことにより、高CO2条件下や暗黒下でも気孔が閉じにくくなった変異株の葉を、高CO2あるいは低CO2条件下で暗黒に置いたところ、高CO2条件下では、葉緑体が細胞間隙に沿う傾向が強くなり、背軸側に集まる傾向が弱くなった。暗黒位の制御に細胞間隙CO2濃度が関与することが示唆された。 次に、野生株の葉の細胞間隙CO2濃度を光合成・蒸散測定装置を用いて調節しながら、集合反応から逃避反応に切り替わる前後の強さの光を照射した。細胞間隙CO2濃度が高いと、より強い光の下でも、葉緑体が細胞の上下面に集まる傾向が維持されたことから、光照射下では、光強度と細胞間隙CO2濃度とのクロストークによって葉緑体の分布が決定されると考えられる。 細胞壁のCO2濃度が葉緑体分布に影響を与えるかを検証するため、葉肉細胞プロトプラストをアガロースゲルに埋め、ゲルの片側に炭酸水素カリウム溶液を置くことによりCO2勾配を作り、各プロトプラスト内の葉緑体分布変化を解析した。ゲルに含まれるCO2を定量するために、一定条件下で勾配を作ったゲルを分割し、窒素気中で塩酸を加えることによって気化させたCO2を赤外線ガス分析器で測定するシステムを考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
葉肉細胞プロトプラストを埋めたアガロースゲルに含まれるCO2を定量する方法として、当初、炭酸ガス透過膜を用いたガラス電極法を予定していたが、正確な測定に必要な量の液体部分を集めることが困難であることがわかった。このため、赤外線ガス分析器を用いた測定システムを立ち上げ、手法の確立に取り組んでおり、研究の進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で用いる二つの解析法、光合成・蒸散測定装置による細胞間隙CO2濃度の調節と赤外線ガス分析器によるゲルのCO2濃度定量については、ほぼ条件設定が整った。前者により、暗黒から強光条件下に置いた個葉における葉緑体分布パターンをシステマティックに解析し、光とCO2とのクロストークの存在を明確に示す。後者により、プロトプラスト内の葉緑体分布が変化する際に、細胞周囲のCO2勾配が重要なのか、CO2濃度の閾値が存在するのか、柵状組織と海綿状組織とで応答性に違いがあるかなどを明らかにする。
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Research Products
(15 results)