2012 Fiscal Year Annual Research Report
高CO2順化に必須の、糖アルデヒド・毒性化合物による細胞障害防御機構の全容解明
Publicly Offered Research
Project Area | Comprehensive studies of plant responses to high CO2 world by an innovative consortium of ecologists and molecular biologists |
Project/Area Number |
24114708
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三宅 親弘 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80294289)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高CO2応答 / 植物 / 光合成 / 呼吸 / アルデヒド |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、植物糖代謝(光合成および呼吸)過程において、副産物として生成する毒性アルドケト化合物(糖アルデヒド)による細胞障害(植物糖尿病)の発症メカニズムおよび解毒メカニズムの全容解明を目的に研究を行っている。本年度は、以下のことを明らかにした。 (1) 高等植物での糖アルデヒド(メチルグリオキサールMG)解毒機構の解明:シロイヌナズナで、NADPHを電子供与体としてMGを還元無毒化する酵素aldo-keto reductase (AKR)ファミリーの全酵素の酵素学的特徴を明らかにし、MG還元に特異性が高いAKRを新たに見出した。さらに、これら酵素が、脂質アルデヒドにより酸化修飾を受け、失活することを明らかにした。つまり、細胞名でアルデヒドによりダメージを被るタンパク質を新たに見いだした。(2) 高等植物でのAKR機能解析:上述したAKRの生理的役割を明らかにするために、AKRを欠損したシロイヌナズナタグラインのスクリーニングを行い、候補ラインを取得した。これらラインでの生葉におけるAKR活性の低下を確認した。 (3) ランソウでの糖アルデヒド(メチルグリオキサールMG)解毒機構の解明:我々は、高等植物葉緑体の祖先生物と考えられているランソウにおいて、糖アルデヒド解毒メカニズムの検証を行った。その結果、ランソウにおいても、AKR活性を見出すとともにAKR遺伝子の同定を行った。現在、その生理的役割を細胞レベルで明らかにするためにAKR欠損ラン藻の作出を行っている。(4) 高等植物での脂質アルデヒド(アクロレイン)解毒機構の解明:植物は、この脂質アルデヒドの中でもっとも反応性が高いアクロレインをNADPHを用いて無毒化する酵素AORをもつ。高CO2環境下で細胞内に糖が高蓄積する状況でのAORの生理的役割を解明するためにAOR欠損シロイヌナズナを作出し、その解析に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績で述べた課題について、以下達成度を記す。 (1) 高等植物での糖アルデヒド(メチルグリオキサールMG)解毒機構の解明:本年度、AKRファミリーの全容解明を来ないそれぞれの酵素の特質を明らかにした。しかしながら、細胞レベルでの、局在性、発現制御など、解明すべき課題(生理学的)は残る。 (2) 高等植物でのAKR機能解析:AKRファミリーのそれぞれの酵素を欠失したシロイヌナズナ・タグラインを入手した段階である。AKRの生理学的役割解明のためには、これらタグラインの詳細な解析が不可欠である。(3) ランソウでの糖アルデヒド(メチルグリオキサールMG)解毒機構の解明:作出したAKR欠損ラン藻の生理・生化学・分子生物学的解析を行う必要がある。(4) 高等植物での脂質アルデヒド(アクロレイン)解毒機構の解明:作出したAOR欠損シロイヌナズナの生理・生化学・分子生物学的解析を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる平成25年度は、これまでと同様に以下の項目の課題遂行に取り組む。(1)高等植物での糖アルデヒド(メチルグリオキサールMG)解毒機構の解明:MGおよび他の糖アルデヒド無毒化に関わるデヒドロゲナーゼ遺伝子の候補を、新たにデータベース上で見いだしている。本年度は、これら候補遺伝子の取得および遺伝子産物の酵素学的解析を行い、AKRとのアルデヒド無毒化の比較解析を行う。(2) 高等植物でのAKR機能解析:取得したシロイヌナズナ・タグラインを用いて、高CO2環境下でのアルデヒドによる細胞障害の評価、光合成・呼吸さらに成長への影響評価を行う。予備的解析では、AKRファミリーの1つが欠損したタグラインでは、高CO2環境下での生育が大きく抑制されることを見出している。このタグラインを中心に、生化学・生理学・分子生物学的解析を推進する。(3) ランソウでの糖アルデヒド(メチルグリオキサールMG)解毒機構の解明:AKR欠損ラン藻を用いて、ランソウでのアルデヒド代謝の全容解明を行うべく、様々な環境にランソウを暴露し、アルヒデヒドによるタンパク修飾、遺伝子発現の確認を行う。さらに、光合成・呼吸名だ尾の生理学的要素へのAKRの関わりを探索していく。(4) 高等植物での脂質アルデヒド(アクロレイン)解毒機構の解明:AOR欠損シロイヌナズナは、光合成が促進する強光環境下、光合成能および呼吸能の低下が生じる。本年度は、強光環境下での糖アルデヒドおよび脂質アルデヒドの相関解析を行い、光合成による細胞障害発生させる化合物の同定を試みる。さらに、高CO2かでのAOR欠損シロイヌナズナの成長解析・生理学的解析を行い、脂質アルデヒドによる細胞障害と高CO2の因果関係を明らかにする。
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