2012 Fiscal Year Annual Research Report
染色体分離を制御する動原体に働く力バランスの定量
Publicly Offered Research
Project Area | Spying minority in biological phenomena -Toward bridging dynamics between individual and ensemble processes- |
Project/Area Number |
24115501
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢島 潤一郎 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00453499)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分子モーター / 生物物理 / 細胞分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、適度に動的不安定性(自律性・可塑性)を備えた細胞分裂装置により、精緻に進行する染色体分離のダイナミックな分子プロセスの一端を明らかにすることである。そのために蛍光標識した1分子~少数分子の生体分子を3次元空間でイメージングする。本年度は、分裂に必須な生体分子のうち、分裂期キネシン14に着目し、その運動方向を決定する分子機構の解明を試みた。キネシン14の運動性の定量のため、全反射顕微鏡及び3次元位置検出顕微鏡システムを確立した。複数のキネシン14分子が協同して運動する場合、ガラス面やビーズなどに固定する必要があるが、その際に固定する部位によって、微小管上での運動方向が変わることが始めて分かった。このことは、従来、キネシン14は微小管のマイナス端方向に運動することで、分裂装置・紡錘体極の形成に関与すると考えられていたが、結合タンパク質などの外部からの相互作用により運動方向を変えることができ、分裂過程において状況に応じ機能する方向を変える可能性を示唆する結果を得た。さらに、1分子のキネシン14が、連続的に微小管と相互作用して機能し続けることができるようなコンストラクトに改変することに成功し、運動方向を決定する部位の特定を試みた。運動連続性キネシン14を用いた運動の定量により、キネシン14のモーター部位は微小管のプラス端方向に移動し、キネシン14特異的なネック部位がモーター部位の運動方向を逆転させるのに重要な働きをしていることがわかった。このことは、従来考えられていた分子機構とは異なり、「モーター部位が微小管と結合する反応段階で運動方向が決定する」ということが示唆された。運動方向性の決定機構は、どうやって動くのかという運動機構そのものと密接に関連しているため、両者の分子機構を包括的に説明できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
染色体分離に関わる構成要素をアフリカツメガエル卵から抽出し、自律的に細胞分裂装置・紡錘体を構築させ染色体の分離過程を再構成する系を確立する過程において、構成成分タンパク質・チューブリンが、重合しにくいことが分かった。観察時の温度制御が不十分であったことがわかり、計画を変更して装置の改善に取り組んだ結果、他の構成生体試料の定量化実験のための最適化が不十分であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行により、新たに分裂期キネシンの運動方向が、外部から負荷のかかる部位に依存し、従来とは異なる分子機構を示唆する結果を得た。これらのキネシンの運動方向決定機構の分子メカニズムを理解するため、以下について更なる改良・検討が必要である。微小管の両端のみを橋のように設置した観察系を確立し、1分子~少数分子のモータータンパク質がチャンバー側面と接触せずに3次元方向に運動する様子を定量するのに背景光を低減した照明系の導入が必要がある。また、モータータンパク質の方向性を有した運動が染色体の分離過程にどのように係わっているのかを明らかにするため、再構成した紡錘体様高次構造体の中で少数のモータータンパク質を3次元空間でイメージングできる技術及び力学的な操作が可能な光ピンセット技術を統合した顕微システムを構築する。
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Research Products
(4 results)