2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子イメージングによる異物排出ポンプ細胞内動態の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Spying minority in biological phenomena -Toward bridging dynamics between individual and ensemble processes- |
Project/Area Number |
24115519
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
川岸 郁朗 法政大学, 生命科学部, 教授 (80234037)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | トランスポーター / 分子構築 / 細菌 / 薬剤耐性 / 全反射型蛍光顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌はRND型異物排出蛋白質複合体を5種類もつ.そのうち, 内膜トランスポーターAcrB-膜融合タンパク質AcrA-外膜チャネルTolCからなる複合体のみが構成的に発現しており,他の複合体の多くは,外的環境からの刺激に応答して発現が誘導される.興味深いことに,すべてのRND型異物排出蛋白質複合体はTolCを外膜チャネルとして利用している.このとき,一つの疑問が生じる.新たに合成されたトランスポーターは,すでにTolCと複合体を形成しているトランスポーターと置き換わり,新規複合体を構築するのだろうか(トランスポーター交換モデル).この点を明らかにするため,以下のような解析を行った. (1) AcrB-GFP発現株の構築と動態の解析: AcrBと緑色蛍光タンパク質GFPの融合体を染色体上から発現する株を構築し,さらにtolC遺伝子欠失変異体も構築した.これらの菌株を全反射型蛍光顕微鏡で観察した結果,AcrB-GFPがTolC存在下ではほぼ動かないのに対して,TolC非存在下では激しく動いていた.これは,強固な籠状分子であるペプチドグリカン層(細胞壁)を貫くTolCと複合体を形成すると,AcrBが固定されることを示唆している. (2) AcrB-GFPの動態に対するAcrD強制発現の影響:内膜トランスポーターAcrDは,AcrA, TolCをAcrBと共有する.AcrB-GFP発現株にAcrDをプラスミド上から強制的に発現させると,固定されていたAcrB-GFPが動き出すこと,この交換はAcrB特異的輸送基質の添加により抑制されることを見出した. 以上の結果は,トランスポーター交換モデルを支持するものである.これは,有害な物質を速やかに除去するためのシステムとして優れた特徴であると言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,大腸菌RND型異物排出タンパク質複合体の細胞内動態の解明を目指している.とくに,環境刺激により新たに合成されたトランスポーターは,すでにTolCと複合体を形成しているトランスポーターと置き換わり,新規複合体を構築するという「トランスポーター交換モデル」の実験的検証を行っている.すでに,AcrB-GFPとAcrDの交換に関しては,精度の高いデータが得られている.また,輸送基質の添加による交換の抑制されることも見出した.さらに,AcrD-GFPの発現株も構築し,イメージング解析に着手した.これは当初の計画以上の進展である.一方で,「数」の解析,すなわちAcrB, AcrA, TolCの細胞内存在量を定量し,細胞膜内でのAcrBの量体数を推定することには着手できていない.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究を継続・発展させ,AcrB-GFPのイメージングに関する成果を中心に論文として取りまとめたい. さらに,以下の解析を行いたい. (1) AcrD 発現誘導システムの確立とAcrD の動態解析 (2) AcrB-GFP動態に対する染色体上遺伝子からのAcrD 発現誘導の影響の解析 (3) 各コンポーネントの細胞内分子数の定量,細胞膜内でのAcrBの量体数の推定 (4) その他の内膜トランスポーターの動態解析
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