2012 Fiscal Year Annual Research Report
少数のダイニンと微小管から成る振動系の作成と構造・機能研究
Publicly Offered Research
Project Area | Spying minority in biological phenomena -Toward bridging dynamics between individual and ensemble processes- |
Project/Area Number |
24115522
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
広瀬 恵子 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 上級主任研究員 (90357872)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分子モーター / 微小管 / 電子顕微鏡 / 鞭毛・繊毛 / 細胞運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、軸糸外腕ダイニン分子が、鞭毛・繊毛内のように微小管を規則的に架橋し、ATP存在下で滑り運動を起こすような複合体の作成を目指した。緑藻クラミドモナスを培養し、その鞭毛から軸糸外腕ダイニンを精製して微小管に結合させ、複合体を作成した。複合体形成の有無や、ダイニンの結合の状態は、ネガティブ染色電子顕微鏡法で観察した。 2本から数本の微小管がダイニンによって架橋された複合体ができたが、複合体の多くは数マイクロメートルの微小管から成り、電子顕微鏡で全体像を観察するのが困難だった。そこで、複合体のサイズを小さくして、少数個の分子から成るシステムを作るため、微小管の長さを短くし、1マイクロメートル程度の微小管の間に十~数十個のダイニン分子が並んだ複合体を作成した。 次に、この複合体にATPを加え、in vitro運動アッセイで観察したが、滑り運動が確認できなかった。これは、精製したダイニンの活性の低さや、不純物によって運動が妨げられているためと考えられたので、このような問題の改善に取り組んだ。まず、人工気象器を購入・設置し、クラミドモナスの培養条件をコントロールすることによって、鞭毛の動きのよい状態で精製を行うことができるようにした。また、数回にわたってクラミドモナス培養、ダイニン精製、電顕観察、運動観察を行い、不純物を減らす努力をした結果、微小管への規則的結合と、運動が観察されるようになった。今後さらに改良を重ねて、不純物を減らす必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
我々は以前、ウニ精子から抽出した外腕ダイニンを用いて微小管との複合体の構造を解析したが、ダイニン分子の尾部と微小管の結合が弱く、運動中に外れやすいという問題があった。そこで本研究では、クラミドモナス鞭毛から抽出したダイニンを用いることにしたが、培養・精製のシステムを立ち上げて、良質のダイニンを得るために予想以上の時間を要したため、進捗状況にやや遅れが出た。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、安定して滑り運動が観察されるようなダイニン・微小管複合体を早急に作成できるように努力する。この後、微小管同士を架橋する条件を検討する。ビオチン化チューブリンを混ぜて重合した微小管を用いて複合体を作成し、両端をビオチン化したDNAを、ストレプトアビジンを介して結合させることを計画している。当初の計画では二重鎖DNAを用いる予定であるが、DNA折り紙の使用も検討したい。 架橋された複合体で運動を観察し、複合体が解離しないことが確かめられたら、クライオ電子顕微鏡法によって、力発生中のダイニンの構造を高分解能で観察し、静的条件下での構造と比較する。
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