2012 Fiscal Year Annual Research Report
動物由来RNAウイルスが制御する非コードRNAマシナリーの探索と解析
Publicly Offered Research
Project Area | Functional machinery for non-coding RNAs |
Project/Area Number |
24115709
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
本田 知之 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (80402676)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 非コードRNA / ウイルス / 核 / スペックル |
Outline of Annual Research Achievements |
ボルナ病ウイルス (BDV) は細胞核で複製するマイナス鎖をゲノムに持つRNAウイルスである。BDVが持続感染した核内には、ウイルスゲノムRNAを含む核内スペックル(vSPOT)が形成される。vSPOTはウイルスの転写・複製の場と考えられてきたが、既存の宿主核内構造物のマーカーとは共局在せず、その詳細な構成分子ならびに宿主細胞へ及ぼす影響については未だ不明である。一方、近年、細胞核にはタンパク質をコードしない長鎖非コードRNA(ncRNA) が存在することがわかってきた。BDVゲノムと長鎖ncRNAは、ともに核内に局在する長鎖ncRNAであり、核内でタンパク質が集積した構造物を形成する。また、クロマチンの構造や細胞の転写と関連している点も共通した特徴である。そこで本研究では、長鎖ncRNAのモデルとして、vSPOTと最近発見した内在性ボルナウイルス様配列(EBLN)の詳細な解析を行う。本年度の研究において、vSPOTマシナリー及びEBLNについて以下の結果を得た。 1)免疫染色及び細胞分画法により、vSPOTはクロマチン上に形成される構造物で、クロマチンの特定の状態依存性に形成されることが明らかとなった。 2)vSPOTには、宿主分子HMGB1が局在する。BDV感染細胞にGFP-HMGB1を発現させ、免疫沈降法によりHMGB1結合分子を探索した。その結果、vSPOTに局在する可能性のある二分子を同定した。 3)非感染細胞にvSPOT局在ウイルス分子を発現することで、人工的にvSPOTを形成することに成功した。その結果、vSPOTがBDV リボタンパク複合体の活性に依存して形成されることが明らかとなった。 4)タンパク質をコードしないEBLNのRNA構造を、RACE法及びノーザンブロット法にて決定した。 5)EBLN RNAは細胞核内にスペックル状に存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画では、3つの小課題を提案していた。そのうち、2課題についての順調な成果を得ており、残る1課題についてもプレリミナリーなデータを得ることに成功している。 成果のあった1つ目の課題は、vSPOTマシナリーの構成タンパク質及び構成ncRNAの探索である。本年度の結果により、vSPOTマシナリーの構成分子候補を複数得ることが出来た。以上のことより、本小課題は計画通り進展していると考えられる。 もう一つは、EBLNの構造解析である。EBLNの発現は総じてそれほど高くなく、実験に適したEBLNを見出すことが、その後の研究進展に必須であった。本年度は、様々な動物種のEBLNのうち比較的発現の高いEBLNをスクリーニングし、一つのタンパク質をコードしないEBLNの構造決定に至った。このことは、今後展開する予定の新しいncRNA(EBLN)の解析において基礎となる知見であり、必須である。さらには、EBLNが特徴的な核内局在を示していることも見出している。以上のことより、本小課題についてもおおむね順調に進展していると判断した。 vSPOTに制御される遺伝子の探索については、現在マイクロアレイのサンプル調整および一部解析中であり、一部出ている結果からいくつかの候補遺伝子群は同定出来ている。今後、すべてのデータが出そろったところで、再度候補遺伝子群の評価を行なう。 全体として、当初の計画より若干の変更点はあるが、大きな方向性に変化はなく、本研究課題の達成に向けて順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果をもとにして、vSPOTマシナリー及びEBLNスペックルの意義を明らかにすることを試みる。具体的には、HMGB1結合分子とvSPOTにより制御される分子からvSPOTマシナリーの機能を明らかにすることと、EBLNの機能解析の2つの小課題について進める。これらの解析結果を統合することで、核内長鎖ncRNAマシナリーの新しい存在意義を明らかにすることを試みる。 1)vSPOTマシナリー構成分子の機能解析 平成24年度に同定したHMGB1結合分子を過剰発現させたり、siRNAにてノックダウンしたりして、vSPOTマシナリーとの関連性を明らかにする。関連性がはっきりしない時のために、vSPOTに局在するRNAを次世代シークエンサーを用いて探索する予定である。また現在、vSPOTにより制御される遺伝子mRNAやタンパク質が、vSPOTに局在する可能性もある。これらの分子についても同様にvSPOTに与える影響を検討する。そして、影響のあった分子の機能からvSPOTの機能を類推する。 2)EBLNの機能解析 EBLNをノックダウンや過剰発現させることにより、EBLNの機能を明らかにする。検討する表現型は、その遺伝子配列の相同性から、宿主の他のEBLNに与える影響を第一とする予定である。表現型がない時には、核内の他のスペックルとの関連性を検討する。他の宿主因子のノックダウンと組み合わせて、EBLNマシナリーの作用原理を明らかにする。
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Research Products
(19 results)