2012 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子p53のタンパクコードと細胞内代謝エネルギー制御機構
Publicly Offered Research
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
24116506
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田中 知明 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50447299)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝子 / シグナル伝達 / 老化 / エネルギー代謝 / 転写因子 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムの守護神と称される癌抑制遺伝子p53の新機能として、ROS・エネルギー代謝調節など細胞の恒常性維持に重要な役割を果たすことが明らかにされ、細胞老化や核初期化に関わるエピゲノム制御機能などの多彩な生理作用と密接にクロストークしていることがわかってきた。しかしながら、細胞内外のエネルギー代謝環境変化がどのようにp53のタンパクコードを書き変えて、その情報がp53転写複合体ネットワーク形成に変換され、その結果として代謝調節関連標的遺伝子群の選択的転写制御を介して新たなエネルギー代謝バランスを構築するかについては、ほとんどわかっていない。がん幹細胞とES/iPSの共通性に着目し、エネルギー代謝動態とROS調節におけるp53機能解明に向けて解析を進めた結果、RNA-seqとIPAによる転写因子シグナル解析からES/iPSではc-MYC・n-MYCなどの癌遺伝子と多能性維持因子(OCT4・NANOG・KLF2・SOX2)の有意な上昇を認め、代謝経路解析ではグルタミン代謝に加え、SREBF1・2などの脂質代謝制御のマスターレギュレーターやステロイド合成・核酸代謝・メチオニンなどのアミノ酸代謝経路が有意に変動していた。癌抑制経路が全体的に強く抑制されている中で、p53シグナルの抑制が特に顕著であった。しかしながら興味深いことに、抗酸化分子GLS2や一部の下流遺伝子は著明に増加しており、幹細胞機能維持に重要な役割を担っていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内外のエネルギー代謝環境変化がどのようにp53のタンパクコードを書き変えて、その情報がp53転写複合体ネットワーク形成に変換され、その結果として代謝調節関連標的遺伝子群の選択的転写制御を介して新たなエネルギー代謝バランスを構築するかについては、ほとんどわかっていない。本研究では、「高速シークエンサーによるゲノムワイドの解析を用いた、がん細胞・老化細胞・iPS細胞における細胞内代謝関連制御分子の探索」、「メタボローム解析を用いた、p53が下流の代謝酵素分子群を介して制御する細胞内メタボライトのダイナミクス解析」「分子間架橋を応用したp53クロマチン複合体解析」における知見や技術基盤を統合的・有機的に連結させることで、p53タンパクコードと細胞内代謝エネルギー制御機構の解明を目指している。実際の研究の進展成果として、RNA-seqとIPAによる転写因子シグナル解析からES/iPSではc-MYC・n-MYCなどの癌遺伝子と多能性維持因子(OCT4・NANOG・KLF2・SOX2)の有意な上昇を認め、代謝経路解析ではグルタミン代謝に加え、SREBF1・2などの脂質代謝制御のマスターレギュレーターやステロイド合成・核酸代謝・メチオニンなどのアミノ酸代謝経路が有意に変動していたことを見出した。また、癌抑制経路が全体的に強く抑制されている中で、p53シグナルの抑制が特に顕著であることを発見し、抗酸化分子GLS2や一部の下流遺伝子は著明に増加しており、幹細胞機能維持に重要な役割を担っていることを明らかにした。これらの成果から、計画は概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の方向性として、p53転写複合体解析に加え、メタボリックストレスによりもたらされる代謝環境応答のゲノムワイドな標的遺伝子発現プロファイルを構築することや、細胞内代謝動態やエネルギー産生・ミトコンドリア機能調節に分子レベルでどのように作用するかを明らかにする。そのために、メタボローム解析と既存の解析結果を連動することが重要である。そこで、これらの3つの解析技術を有機的に組み合わせ、タンパクコード解読と複合体解析・コード依存的エネルギー代謝調節分子の探索と発現解析・コードと代謝調節分子群制御によるその代謝作用機序の検証によるメカニズム解明を計画している。具体的に以下の項目を中心に解析を進める予定である。(I) 安定同位体を用いた代謝環境変化のp53タンパクコード解読とコード依存的複合体解析として、 (a)安定同位体を用いた代謝環境変化のp53タンパクコード解読と (b)分子間架橋技術を応用したメタボリックストレス下のコード依存的p53転写複合体解析を行う。また、(II) 高速シークエンサーを用いたp53-ChIP-seqとエピゲノム・トランスクリプトーム解析による細胞内代謝関連制御分子の探索と代謝環境応答時の発現解析を予定している。
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Research Products
(13 results)