2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン修飾酵素の細胞内エネルギー感知機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
24116507
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 寿郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (80323020)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | エピゲノム / 転写代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では栄養環境・エネルギー状態の変化に伴いHMT, HDMTの補酵素であり、ATP依存性の代謝産物SAM、#61537;KG、FADのレベルがどう変化するか、HDMT、HMTはこれら補酵素の細胞内レベルのダイナミックレンジと連動し代謝のセンサーとなりうるのか、を解明することを目的とし、白色脂肪細胞・褐色脂肪細胞分化モデルにおいて解析する。具体的にはヒストン修飾酵素の活性、エピゲノムの変化、標的代謝関連遺伝子の発現変化、エネルギー代謝経路の変化、ヒストン修飾酵素活性に必須な補酵素(代謝物)レベルの変動の関連性を解明する。これらより、細胞が栄養環境に適応するメカニズムを明らかにする。 樹立した褐色脂肪細胞でのマイクロアレイ解析から、JMJD1Aの標的遺伝子候補としてミトコンドリア代謝遺伝子UCP1, Cpt1b, Cox7a1が明らかとなった。絶食・寒冷刺激時における翻訳後修飾解析を行ったところ、JMJD1AはプロテインキナーゼAによりリン酸化されることが明らかとなり、栄養環境に応答したエピゲノム制御にはJMJD1Aのリン酸化が関与していることが示された。 3T3-L1脂肪細胞分化過程において細胞外フラックスアナライザーを用いた代謝解析を行ったところ、分化に伴う解糖系ならびにミトコンドリア代謝の亢進が認められた。更にメタボローム解析をおこなったところ、脂肪細胞分化に伴う解糖系ならびにTCAサイクル代謝物の増加が見られた。 脂肪細胞分化を抑制するH3K9メチル化酵素の標的遺伝子を同定するために、SETDB1のクロマチン免疫沈降-sequence (ChIP-seq) を行った。SETDB1は転写因子C/EBPa遺伝子に結合し、H3K9トリメチル修飾を入れることにより転写を抑制し、下流のPPARgを介した代謝関連遺伝子の発現を抑制していることを突き止めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H3K9メチル化酵素SETDB1ならびに脱メチル化酵素JMJD1Aの機能解析により、これらヒストン修飾酵素がエピゲノムを変化させ代謝を制御することを解明した。よって本研究の第一目的である「エピゲノムによる代謝制御機構の解明」は達成された。細胞外フラックスアナライザーによる代謝プロファイルならびにメタボローム解析により、前駆脂肪細胞が脂肪細胞に分化する際には代謝スイッチが起こり、解糖系ならびにTCAサイクルの代謝物が顕著に増加することが見出した。ヒストン脱メチル化酵素の補酵素であるアルファケトグルタル酸が分化前後で顕著に増加していることから、細胞内代謝物がエピゲノムを制御する可能性が示唆された。よって本研究の第二目的である「代謝物によるエピゲノム制御の解明」に向けておおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
脂肪細胞分化におけるH3K9メチル化酵素SETDB1ならびにH3K9脱メチル化酵素JMJD1Aの活性制御機構を明らかにするために、翻訳後修飾解析、複合体解析、活性測定を行う。またH3K9脱メチル化酵素JMJD1Aによるエネルギー感知機構の詳細を理解するために、翻訳後修飾、複合体解析、ゲノムワイド局在解析、ヒストン修飾解析を行う。細胞外環境の変化(低グルコース刺激)における細胞内代謝物とヒストン修飾の変化を、メタボローム解析とクロマチン免疫沈降により解析する。脂肪細胞分化過程における細胞内代謝物変化が、ヒストン修飾酵素活性に与える影響を解析する。
|
Research Products
(5 results)