2012 Fiscal Year Annual Research Report
非アルコール性脂肪性肝炎におけるエネルギー代謝と転写環境のクロストーク
Publicly Offered Research
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
24116508
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 稔 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (80321909)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞間相互作用 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / 肝線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)における発症機序をオンコスタチンM(OSM)の受容体(OSMR)シグナルとエピジェネティックな制御の両面から解析することで、治療標的となりうる分子の同定を目的としている。まず、In vivoにおけるオンコスタチンM(OSM)の作用を検証するために、HTVi法により肝臓でOSMを発現させた結果、発現4週間後の肝臓で著しい肝線維化が認められた。また、この際に血中肝障害マーカーであるALTは正常値を示したことから、肝炎を伴わないで肝線維化のみが進行していることが明らかとなった。すなわち、OSMは肝臓内で肝星細胞の活性化や線維化に関わることが示された。そこで、OSMが直接的に肝星細胞の活性化に寄与する可能性を調べるために、成体肝臓から調製した肝星細胞のin vitro培養を行ない、OSMを添加した。しかし、活性化の指標となるコラーゲン遺伝子の発現誘導は見られなかったことから、OSMは直接的には肝星細胞を活性化しないことが示唆された。次に、肝星細胞と血液細胞を加えた共培養系を構築しOSMを添加した結果、コラーゲン遺伝子の誘導が認められた。以上の結果から、OSMは血液細胞を介して肝星細胞の活性化に寄与することが示唆された。これまでに、NASH発症過程の前段階においてOSMはマクロファージのM2活性化に寄与し、インスリン抵抗性の抑制に作用する可能性を示している。今回の結果から、NASH発症過程ではOSMが産生し続けることが肝線維化の一因になっている可能性が示され、そこには血液細胞が関与することが示唆された。今後はこの共培養系を利用して、マクロファージのM2活性化と肝線維化との関連、肝星細胞の活性化因子の同定、肝星細胞の筋線維芽細胞への分化転換時のエピジェネティックな転写制御について調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝星細胞のin vitro評価系の確立とそれを用いたOSMの作用機序の解析などは計画通り進展している。しかしながら、昨年後半に当研究施設の動物舎で感染事故が発生し、肝炎を引き起こしうる病原体であったことから、当初予定していたOSMR KOマウスと野生型マウスを用いたマイクロアレイ解析とメタボローム解析ができなくなり、購入した野生型マウスのみでできる研究内容に変更することを余儀なくされた。しかし、25年度の計画を前倒することで対処し、全体としては順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
飼育施設の感染事故により、当初計画した順番で解析が進んでいない部分もあるが、飼育施設のクリーン化と遺伝子改変マウスのクリーニングが完了したことから、本年度はできるだけ早期にマイクロアレイ解析とメタボローム解析を実施し、全体計画の達成を目指す。
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Research Products
(4 results)