2012 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋グルココルチコイドレセプターによるシステミックエネルギー代謝制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
24116510
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 宣明 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (30396890)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 発現制御 / シグナル伝達 / ステロイド / 核内受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー代謝などの細胞機能の調節に、細胞内外の多彩なシグナルによる遺伝子転写制御が関わっている。本研究では、細胞のシグナル検知・伝達機構と標的遺伝子群の転写環境の構築を結びつける分子機構の究明を目指す。すなわち具体的には、骨格筋代謝制御における副腎皮質ホルモン、グルココルチコイド(GC)の作用機構と生理的な意義を、核内受容体グルココルチコイドレセプター(GR)を介した遺伝子発現制御機構の解析を基軸として究明するとともに、骨格筋組織と他のエネルギー貯蔵組織(脂肪組織、肝臓)との間における代謝調節の連携機構を解明する。本年度は、骨格筋特異的GR遺伝子破壊(GRmKO)マウスおよび対照マウスに、副腎摘除手術(内在性GC分泌不能)または偽手術を行い、骨格筋におけるGC依存的mRNA発現の解析を行った。これらのマウスを自由摂食で飼育した場合と、48時間絶食させた場合の解析結果から、生命維持に必要なエネルギー供給に関して危機的な状態である絶食は、視床下部―下垂体―副腎皮質軸シグナルを介した内在性コルチコステロンの分泌および骨格筋GRを介して、転写因子Kruppel-like factor 15 (KLF15)、Forkhead box O (FoxO)1, 3、の発現を誘導するとともに、これら下流転写因子と協調してGR転写カスケードを形成し、多彩な標的遺伝子の発現を一括して誘導することが示された。これら標的遺伝子群の機能は、タンパク質分解系、アミノ酸分解系、といった異化促進機能および、mTORC1阻害によるタンパク質翻訳抑制系による同化抑制機能に大別され、骨格筋から全身にエネルギーを供給するための機構の両翼を担っていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度交付申請書に記載した研究実施計画をおおむね達成した。すなわち、骨格筋特異的GR遺伝子破壊マウスを利用することにより、薬理学的濃度のグルココルチコイドに対する応答のみならず、内因性のグルココルチコイドの生理的範囲内での濃度変化に対する応答が、骨格筋の代謝制御を介して全身のエネルギー代謝調節に重大なインパクトを与えていることが明らかとなりつつある。ここで得られた結果を基にして、次年度に計画している研究を行うことにより、交付申請書に記載した「研究の目的」を達成できる見込みが高いと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
骨格筋特異的GR遺伝子破壊(GRmKO)マウスの解析を基軸に、以下の相互に連関するプロジェクトを並行して推進する。 1. mTORC1がGR転写カスケードに及ぼす影響の生理的意義の解明―GRmKOマウス骨格筋にKLF15, FoxO1, FoxO3を遺伝子導入し、強制的にGR転写カスケードを駆動する。標的遺伝子の発現、プロテアソーム系活性、オートファジー活性、mTORC1活性、筋線維径、筋量、筋力変化を解析し、これら転写因子の骨格筋代謝調節における役割を明確にする。mTORC1によるGR抑制の生理的意義を明確にするため、mTORC1活性調節下にDEX投与を行い、骨格筋代謝状態を対照マウスと比較・解析する。 2. mTORC1による骨格筋GR機能抑制の分子機構の解明―前年度に同定したGR結合因子、GR翻訳後修飾およびエピゲノム修飾の役割解析を行う。結合因子のノックダウン(siRNA)、GRの責任ドメイン、被修飾アミノ酸残基等への点変異導入、骨格筋で重要な他の核内受容体(MR, AR, TR, PPAR, RXR, ERR等)とGRの機能ドメインを交換したキメラ変異体等を利用して、mTORC1によるGR抑制機構におけるタンパク質-タンパク質(またはRNA, DNA)間相互作用を解明する。 3. 骨格筋GR機能阻害による肝臓、脂肪組織における代謝変化機構の解明―前年度と同様に飼育した各マウスの、肝臓、各脂肪組織におけるmRNA発現の網羅的解析を行い、遺伝子発現変化の責任転写因子、責任エピゲノミック修飾を同定する。さらにP1.にて得られた、骨格筋におけるGR転写カスケード標的遺伝子の機能情報、前年度の解析で得られた代謝パラメーター、血漿成分、病理学的知見等の情報をもとに、骨格筋から他の組織へのシグナル伝達機構を解明する。
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Research Products
(8 results)