2012 Fiscal Year Annual Research Report
代謝シグナル応答性ヒストン修飾酵素の同定と機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
24116526
|
Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
松本 道宏 国立国際医療研究センター研究所, 糖尿病研究センター・分子代謝制御研究部, 部長 (90467663)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 遺伝子転写 / ヒストン / 肝臓 / 糖新生 / グルカゴン / インスリン / 糖尿病 / メチル化 |
Research Abstract |
リシンメチル化酵素に特徴的なSETドメインを有する分子Setxの肝臓の代謝調節における役割および、その発現調節機構について検討した。はじめにin vivoならびにin vitroでの機能獲得ないし機能喪失実験を行うため、野生型SetXないしSetX対するshRNAをコードするアデノウイルスベクターを作製した。非肥満マウスの肝臓におけるSetXのノックダウンにより、空腹時の糖新生系酵素の発現誘導が抑制され、血糖値が低下した。またSetXをノックダウンしたマウスではピルビン酸負荷試験により評価した肝糖新生能が障害されていた。培養肝細胞においてもSetxのノックダウンにより、グルカゴン/cAMPによる糖新生系酵素遺伝子の発現誘導は抑制された。これらの結果から、SetXは絶食時の肝糖新生の誘導に必須の分子であることが明らかとなった。SetXの発現調節に関しては、初代培養肝細胞を用いた検討から、そのmRNAの発現がグルカゴン-cAMP-PKA経路によって活性化されることを明らかにした。報告者らは最近、CITED2、GCN5、PGC-1αの相互作用が糖新生系酵素の発現誘導において中心的な役割を果たすことを明らかにしたが(酒井らNat Med.2012 18:612-7)、肝細胞における各分子のノックダウンによる検討から、SetXの発現調節へは、GCN5、PGC-1αの関与は少ないものの、CITED2が強く関与することを明らかにした。SetXのクロマチン結合領域の決定と標的分子の同定にも着手し、cDNAマイクロアレイと定量的PCR法によりSetXの機能喪失により低下する複数の代謝調節遺伝子群を同定した。SetXのプローモーターへのリクルートを複数の市販の抗体を用いたChIP-Seqにより同定しようと試みたが、免疫沈降ができず、現在研究部にて新たなポリクローナル抗体を作製中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に計画していた検討の内、SetXの機能喪失実験はin vivo、in vitroいずれも終了した。また、SetXの発現調節の分子機構に関しても、計画通り実施することができた。SetXのクロマチン結合領域の決定と標的分子の同定についてもmRNA発現解析は実施できた。クロマチン結合領域の決定はChIP-Seqを行うための抗体が入手できず、自ら作製を開始した。以上の状況から上記のように自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、ChIPが可能なSetX特異的抗体が作製できれば、クロマチン結合領域を網羅的解析により決定し、発現解析結果と合わせてSetXの糖新生系酵素以外の標的遺伝子を同定する。また、Setxの基質ピストン分子種、メチル化を受ける部位と残基を明らかにする。肝細胞からの抗SetX抗体免疫沈降産物中のヒストンメチル基転移酵素活性を調べる。またdb/dbマウスなどの肥満糖尿病モデルを用いてSetXの糖尿病の病態への関与も肝臓特異的な機能喪失実験などにより検証する。
|