2012 Fiscal Year Annual Research Report
発生・分化における細胞核内3次元ゲノム構造の役割
Publicly Offered Research
Project Area | Cell Community in early mammalian development |
Project/Area Number |
24116709
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
國府 力 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70379238)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ゲノム / 発現制御 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成24年度は、まず哺乳類細胞の分化過程における核内3次元ゲノム構造の変化の有無を検討する目的で、マウスES細胞培養系で均一な細胞集団から別の均一な細胞集団へのin vitro分化系の確立を試みた。その結果、ES細胞から栄養外胚葉(Trophectoderm, TE)細胞へのin vitro分化系が使用細胞数や転移酵素の導入効率の面で本実験の目的に適していることが分かった。そこでマウスES細胞の特徴的な2つのゲノム領域に着目し、この系を用いて分化に伴うトランスポゾン転移分布の比較実験を開始した。 一方、トランスポゾンの転移分布を解析する過程で、マウスゲノムのリピート配列の分布等によってはこれまでに使用した次世代シークエンサー(GAIIx)の短いリードでは解析精度に限界が生じる可能性が検討された。そこで平成24年度はGAIIxに加えて、リード数では劣るものの長いリード長が得られる次世代シークエンサー(GS FLX)を用いた検証実験を行い、現在データ解析中である。 さらにトランスポゾンの転移・再構成プロセスと染色体構造の関係を分析する過程で、DNA二重鎖切断と修復過程における核内染色体DNAの振る舞いを把握する必要性が求められた。そこでマウスES細胞の系でゲノム修復に関わるBlm遺伝子を一時的に抑制できるシステムを利用し、酵素的にDNA二重鎖切断を導入した際のゲノム再構成の様相を高密度SNPタイピング・array-Comparative Genome Hybridization (array-CGH) により包括的に解析した。その結果、ゲノム再構成断端で1-6塩基程度のマイクロホモロジーが関与すること、再構成断端がinvertedリピート領域に集積しやすい傾向があることが分かった。この結果は論文にまとめ現在投稿中(リバイス中)である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度中に、それまでに用いた次世代シークエンス・プラットフォーム GAIIx (Illumina社) から産出される短リードのデータではトランスポゾン再挿入分布の解析精度に限界が生じる場合があることが判明した。そこで解析プロセスを一部変更し、より長いリード長が得られるGS FLXシークエンサー(Roche社)やPacBioシークエンサーによる解析・検証を追加することになり、このための新たな試料作製プロトコールとデータ評価の確立に時間を要した。また、マウスES細胞からのin vitro分化実験系として当初検討していた皮膚角化細胞への培養系においては、トランスポゾン転移酵素の導入効率が予想よりも低く、様々な条件検討によっても改善が困難であった。そこで新たにES細胞からTE(栄養外胚葉)細胞へのin vitro分化系を整備し、これに対するトランスポゾン転移誘導実験の条件検討を行った。以上2つの理由から、これらの実験の結果に基づいて選択されるゲノム領域の改変実験が遅れる状況となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に確立したマウスES細胞からTE細胞へのin vitro分化培養系へのトランスポゾン転移誘導実験を中心に、細胞分化の過程における核内3次元ゲノム構造解析を進めて行く。またトランスポゾン転移挿入分布のシークエンス解析の手法として、GAIIxシークエンサーから得られる短リードデータとGS FLXあるいはPacBIoシークエンサーから得られる長リードを組み合わせることにより、双方の特長を生かした新しいデータ解析システムを整備し、従来のデータと合わせて高精度のデータ解析を実現する。
|