2012 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン制御因子ポリコーム群による初期胚の細胞運命や分化段階の制御
Publicly Offered Research
Project Area | Cell Community in early mammalian development |
Project/Area Number |
24116711
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
遠藤 充浩 独立行政法人理化学研究所, 免疫器官形成研究グループ, 研究員 (40391883)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / クロマチン / 転写制御 / 胚性幹細胞 / ES細胞 / 初期胚 / 発生 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリコーム群遺伝子Ring1A/BはヒストンH2Aに対するユビキチンリガーゼであり、PRC1複合体を形成して、様々な遺伝子の転写抑制に関わることが分かっている。Ring1A/Bは標的クロマチンの凝集を行うことによって遺伝子の転写抑制に寄与するとされるが、Ring1A/BによるH2Aモノユビキチン化修飾の役割や作用機序については不明であった。そこで申請者は酵素活性を失った点変異Ring1Bを作成し、それをRing1A/B欠損ES細胞に導入することにより、H2Aユビキチン化活性を持たないPRC1複合体を細胞内で再構成することに成功した。そしてH2Aユビキチン化修飾が、PRC1複合体による標的クロマチン凝集には必要ないが、発生関連遺伝子の転写抑制に必要なステップであることを明らかにして、その成果をPLoS Genetics雑誌で発表した。 一方、Ring1A/Bによる標的遺伝子のH2Aユビキチン化には、PRC1複合体を介する仕組みと介さない仕組みの両方が存在し、Ring1A/Bが形成するPRC1以外の複合体(E2F6複合体、Bcor複合体等)の機能も重要であることが示唆された。そこで、PRC1複合他には含まれないがE2F6複合体に含まれるMBLR(Pcgf6)の機能解析を行った。その結果、MBLRはES細胞においてGerm cell関連遺伝子の転写抑制に関与しており、H2Aユビキチン化活性を有するRing1Bをこれらの遺伝子へ惹き寄せる役割を担っていることが分かった。さらに、MBLRがヒストンH3K27メチル化活性を有するPRC2複合体も引き寄せる可能性が示唆された。これは「PRC2複合体がH2Aユビキチン化活性(Ring1A/B)をリクルートする」という通説と異なる知見であり、検証実験を現在行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリコーム群による初期発生制御の仕組みのひとつとして、ヒストンH2Aのユビキチン化修飾が発生関連遺伝子の転写抑制に寄与していることを証明し、その成果を論文発表することができた。また、ユビキチンリガーゼRing1Bと結合する分子のひとつであるMBLRが、Ring1BをGerm Cell関連遺伝子へ引き寄せることを明らかにし、ヒストンH3K27メチル化活性を有するPRC2複合体も引き寄せる可能性を見出すことができた。初期発生過程におけるポリコーム群の作用メカニズムについて新しい知見が得られつつあるので、研究目的の達成に向けて本研究は順調に進展していると思います。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリコーム群欠損マウスや初期胚由来の幹細胞株を用いて、ポリコーム群による初期発生制御の仕組みの解明を目指す。 (1) ES細胞, TS細胞, XEN細胞, エピブラスト幹細胞において、ポリコーム群Ring1B, Mel18, MBLR, Rybpの標的遺伝子を同定する。具体的には、これらポリコーム群の欠損ES細胞における遺伝子発現様式の変化をRNA-seq解析により明らかにする。また、これらのポリコーム群が結合する遺伝子領域をChIP-seq解析により明らかにし、RNA-seqデータと合わせた解析を行うことにより、機能的標的遺伝子の同定を行う。さらに、各幹細胞の分化前後における遺伝子発現様式の変化をRNA-seqにより明らかにし、同定したポリコーム群の機能的標的遺伝子との相関を調べる。 (2) 細胞外シグナルの有無による各幹細胞における遺伝子発現様式の変化をRNA-seqにより明らかにし、ポリコーム群標的遺伝子との相関を調べる。TS細胞およびエピブラスト幹細胞においては、Smad2/3とポリコームおよびヒストンH3K27脱メチル化酵素Jmjd3との機能的相関に注目した解析を行う。 (3) 前年度に引き続き、組織特異的、時期特異的Ring1B欠損マウスの作成および解析を進める。可能であればさらにCdkn2a(Ink4a/Arf)欠損マウスと交配し、これまで観察してきた表現型への影響を調べ、ポリコーム群による細胞系譜や分化段階の制御の全体像の解明を目指す。
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Research Products
(7 results)