2012 Fiscal Year Annual Research Report
オルガネラ様共生体に輸送される宿主動物由来タンパク質の機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
24117510
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
中鉢 淳 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 准教授 (40332267)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アブラムシ / 菌細胞 / ブフネラ / ケミカルバイオロジー / 化合物アレイ / 阻害剤 / 機能未知タンパク質 / 機能解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業害虫として名高いアブラムシは、体腔内に「菌細胞(bacteriocyte)」と呼ばれる特殊な細胞群を持ち、この細胞質中に、共生細菌ブフネラ(Buchnera aphidicola, Gammaproteobacteria)を多数収納している。ブフネラは、約2億年にわたり、アブラムシの親から子へと垂直感染のみによって受継がれており、その過程で多くの遺伝子を失っているため、アブラムシの外で増殖することはできない。一方でアブラムシは、餌である植物師管液に乏しい栄養分の供給をブフネラに依存しており、ブフネラなしでは生存できない。すなわち、アブラムシとブフネラは、両者を合わせてはじめてひとつの生物としてふるまうことのできる複合体を形成していると言え、多細胞生物による、オルガネラ様共生体の獲得機構を理解するための絶好のモデルである。また、同様な菌細胞内共生系は、アブラムシやそれに近縁な害虫グループの生存に必須である一方、周辺環境中の他の生物には存在しないため、環境負荷が低く、かつ効果的な新規害虫防除法の標的としても有望である。本研究計画では、菌細胞内共生系において枢要な役割を果たしていると目される機能未知タンパク質の選択的阻害剤を、新規ケミカルバイオロジー的手法を駆使して探索し、これらを用いて各タンパク質の機能を明らかにする。平成24年度は、化合物アレイ法により得られた複数の阻害剤候補化合物のアブラムシ生体への投与実験を進め、このうち1種類の化合物について、共生系に対するきわめて興味深い効果を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記阻害剤候補化合物の投与により、アブラムシ-ブフネラ共生系の崩壊を示唆する効果が見出されており、標的タンパク質の機能解明に直結することはもちろん、将来の防除剤開発の基盤データとしても重要な成果と言える。このように本研究計画は目的を達成しつつあり、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から引続き、アブラムシ生体へのタンパク質機能阻害剤候補化合物の投与実験を進める。投与により効果の現れた化合物については、プルダウンアッセイなどにより、標的タンパク質への結合特異性の検証を行う。また、アブラムシでは有効性が低いとされるが、RNA干渉法による標的遺伝子のノックダウンも試みる。これらにより、アブラムシの菌細胞内共生系において枢要な役割を果たしていると目される機能未知タンパク質の機能を明らかにし、菌細胞内共生系の存立基盤の解明をめざす。また、この解析過程で得られるアブラムシの生育阻害・殺傷効果に関するデータは、安全で効果的な新規防除剤開発の基盤情報としてデータベース化する。
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Research Products
(1 results)