2012 Fiscal Year Annual Research Report
酵母オルガネラの機能改変による人工共生系の創出と有用物質生産への応用
Publicly Offered Research
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
24117514
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原 清敬 神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40434378)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光利用 / グルタチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、出芽酵母のミトコンドリアに光駆動プロトンポンプであるデルタロドプシンの機能的発現を目指しているが、本年度は、哺乳類の培養細胞ミトコンドリアへのデルタロドプシンの発現を行った。具体的には、デルタロドプシンにシグナルペプチドを付加し、ヒト培養細胞のミトコンドリアにデルタロドプシンを特異的に発現させた。ミトコンドリアにおけるデルタロドプシンの発現量はタグを利用して確認を行った。次にミトコンドリア膜電位インジケーターを用いて光駆動プロトンポンプ活性を測定し、デルタロドプシンが哺乳類培養細胞のミトコンドリアで機能していることを確認した。また、出芽酵母のミトコンドリアにデルタロドプシンを発現するためのプラスミドを構築してた。 一方、本研究では、光駆動ATP合成ミトコンドリアにて合成されたATPを様々なATP駆動駆動酵素に供給し、有用物質の生産性を向上させることを目的としている。そこで、ATP駆動酵素のモデルとして、学術的に知見が豊富で社会的にも付加価値の高いグルタチオンを光を用いて合成する、光駆動ATP再生グルタチオン生産プロセスの確立を目指した。グルタチオンは、細胞質において、γグルタミルシステイン合成酵素(GCS)によってグルタミン酸とシステインから合成されたγグルタミルシステイン(γ-GC)と、グリシンからグルタチオン合成酵素(GC)によって合成される。そこで、遺伝子組換え技術を用いて、これらの酵素の発現量を向上させ、グルタチオン合成能を強化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
哺乳類の培養細胞ミトコンドリアへのデルタロドプシンの発現および光駆動によりデルタロドプシンがミトコンドリアで機能していることを示した研究に関しては、以下の学術論文に掲載された。 Hara, K. Y., Wada, T., Kino, K., Asahi, T., Sawamura, N. (2013) Construction of photoenergetic mitochondria in cultured mammalian cells., Scientific Reports, 3, 1635
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Strategy for Future Research Activity |
細胞質においてグルタチオンの合成に関わる酵素GCSは、生産物であるグルタチオンによって活性が阻害されるフィードバック阻害が知られており、細胞質における様々な代謝改変を行ってもグルタチオン含有量がある一定値を超えられないのは、このフィードバック阻害が原因の一つではないかと考えられている。そこで、細胞質のグルタチオンを積極的に液胞へと取り込むことができれば、この細胞質におけるフィードバック阻害を回避し、より高いグルタチオン生産性を達成できるのではないかと考えられる。出芽酵母においては、液胞内へグルタチオンを輸送するトランスポーターが知られている。そこで、これらの発現量を遺伝子組換えにより増加させることで、液胞内へのグルタチオンの輸送活性を向上させる。また、液胞膜に存在し、グルタチオンの分解活性を有するγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)遺伝子およびシスチニルグリシン分解酵素(CGase)遺伝子の破壊により、GSHの分解活性を低減させ、液胞内のGSH濃度を高める。
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