2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内物質代謝系の統合と変遷に伴うミトコンドリア輸送体の獲得と共進化
Publicly Offered Research
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
24117516
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
戸澤 譲 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (90363267)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 輸送体蛋白質 / シアニディオシゾン / マラリア原虫 / 酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、オルガネラ成立過程およびその後の進化において生じた代謝システムの統合および変遷に伴い分子進化を経たと考えられるミトコンドリアの特異的膜輸送体Mitochondrial carrier (MC) を対象として、生化学的な手法を中心とした機能解析を進める。研究材料には、真核生物の中でも極めてユニークな進化を遂げ、かつ感染症の原因生物として医学的に重要なマラリア原虫(Plasmodium falciparum)と、我が国が中心として進むオルガネラ研究のモデル生物として学術的に重要なシアニディオシゾン(Cyanidioschyzon merolae)を用い、MC機能解析研究が比較的進んできた酵母(Saccharomyces cerevisiae)との比較を交え、それぞれの生物のMC分子種の完全同定、輸送基質特異性の解析による機能的役割、および同定したMCとTCA経路の進化との相関性を明らかにする。 平成24年度には、酵母のミトコンドリア輸送体35種類の遺伝子単離、タンパク質合成、ならびにそれらの膜複合体形成能解析について完了した。さらに、マラリア原虫の12種類、シアニディオシゾンの10種類のミトコンドリア輸送体候補遺伝子の単離も完了している。機能解析については、酵母のATP/ADP交換輸送体の試験管内再構成による活性の確認により3種類のAACタンパク質全てが同様な基質特異性によりATP/ADP交換輸送体として機能していることを示すことに成功した。酵母AAC3に関する直接的な機能解析は今回が世界でも最初の報告である。同様の実験をマラリアの相同遺伝子産物に対しても行ったところ、マラリアミトコンドリアのATP/ADP交換輸送体の同定に成功した。成果は学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画項目は(1)マラリアおよびシゾンの全MC候補遺伝子のcDNA単離および塩基配列解析、(2)マラリアMCタンパク質の基質特異性の解析、の2つであった。 項目(1)に関しては、平成24年度中に、酵母MC35種類、マラリア原虫MC12種類、シアニディオシゾンMC10種類の候補遺伝子の単離が完了し配列比較もほぼ終了した。 項目(2)に関しては、タンパク質合成ベクター構築を全てのMC遺伝子について完了し、6種類については疑似膜上へのタンパク質組込み系の構築も終了し、このうち1種については、放射標識化合物を用いたトレーサー実験により、ATP/ADP交換輸送体として同定することに成功している。 以上のように、遺伝子の単離は、スケジュール通りかそれ以上のペースで進んでおり、各遺伝子のタンパク質合成に関しても着実に作業が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画項目(1)マラリアおよびシゾンの全MC候補遺伝子のcDNA単離および塩基配列解析、(2)マラリアMCタンパク質の基質特異性の解析、を計画通り進める。 この際、シアニディオシゾンのミトコンドリア輸送体候補は、実際には葉緑体や液胞に局在して機能する、あるいは複数のオルガネラに共存する可能性も秘めている。局在性解析を本領域研究の他班との共同研究により進める必要があると考えている。具体的には東京工業大学の今村准教授と共同研究を計画している。
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