2012 Fiscal Year Annual Research Report
赤痢アメーバマイトソームによる硫酸活性化経路の獲得と寄生適応との関連性の解明
Publicly Offered Research
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
24117517
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
見市 文香 (三田村文香) 佐賀大学, 医学部, 助教 (70576818)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 赤痢アメーバ |
Outline of Annual Research Achievements |
赤痢アメーバのマイトソームは、他種のそれと比較して特に退化していて、ミトコンドリア由来の機能をほとんど欠失しているが、代わりに通常は細胞質や色素体に存在する硫酸活性化経路が主たる機能である。最終代謝産物は含硫脂質であるが、その機能は明らかになっていない。本研究は含硫脂質の機能を解析し、“オルガネラの進化と宿主への寄生適応との関連性”を解明することを目的とする。含硫脂質の機能を解析するため具体的には以下の3点の研究1) 含硫脂質の分子同定2)含硫脂質の病原性の評価3) 赤痢アメーバ (Entamoeba histolytica) の近縁種間での比較 を行った。1)に関しては最初に精製方法の確立を試みた。結果、Oasis WAXカラム・薄層クロマトグラフィーにより8種類の硫酸化脂質をそれぞれ高い精製度で精製する方法の確立に成功した。現在、これらの質量分析およびNMRによる解析を行っている。2)については1)で同定した分子がin vitroの系で宿主細胞の炎症性サイトカインの産生を阻害することを見出した。3) Entamoeba histolytica とEntamoeba moshkovskiiと含硫脂質の合成パターンを比較した結果、Entamoeba moshkovskiiのみで合成されるものを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)個々の含硫脂質の精製方法を確立に成功したこと2)原虫の大量培養方法を改良し、これまで困難であった量の原虫を簡便に得ることができるようになったこと、により含量の少ない含硫脂質の構造解析が可能になった。また、in vitroで宿主免疫細胞の応答を抑制する効果も見出し、含硫脂質の機能を議論できるようになった。今後8種類全ての構造を明らかにし、2)の系で機能を解析することが出来れば、“オルガネラの進化と宿主への寄生適応との関連性”を解明することが出来ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
[1] 含硫脂質の分子同定を引き続き行う。24年度に確立した方法で、8種類の構造を全て決める。 [2]含硫脂質の病原性の評価のため、宿主感染のin vivoの系を構築を引き続き試みる。また、新たな系としてマウスの大腸および盲腸の組織切片との共培養(ex vivo)の系の導入も試みる。in vitroの系でも引き続き、含硫脂質の宿主免疫細胞の抑制効果の分子メカニズムについても解析を行う。 [3] 赤痢アメーバ (E. histolytica) の近縁種間での比較については。病原性が無いが寄生性であるEntamoeba disparおよび自由生活性のMastigamoeba balamuthi で細胞内で合成される含硫脂質の種類や量、性質を比較する。また、Entamoeba moshkovskiiでのみ合成される含硫脂質の構造および機能解析も行う。 以上により赤痢アメーバの新規病原性因子を得、マイトソームの進化と宿主側の役割を明らかにされることが期待される。
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Research Products
(4 results)