2012 Fiscal Year Annual Research Report
トリミエマ原虫共生系を用いた細胞内共生研究モデルの構築
Publicly Offered Research
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
24117518
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
新里 尚也 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (00381252)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞内共生 / 原生動物 / 嫌気 / 水素 / メタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、メタン生成アーキアと機能未知の真正細菌共生体の2つの共生体を細胞内に保持するトリミエマ原虫を細胞内共生研究のモデルとすべく、共生体の機能推定やゲノム解析に取り組んでいる。今年度は、機能未知の真正細菌共生体TC1のゲノム解析に注力して研究を行った。トリミエマ原虫は餌として乳酸菌を細胞内に取り込む他、原虫の大核ゲノムの量が非常に多いことから、共生体のゲノムを解析するためには、これらを純度良く精製する必要がある。そこで、原虫を事前に飢餓状態に置いて細胞内の乳酸菌を消化させた上で、遠心分画の条件検討を行った。その結果、パーコールを用いた不連続密度勾配遠心法を用いる事で、共生体をほぼ純粋に精製することができた。この画分よりゲノム抽出を行い、約200ngのゲノムDNAを調製することができた。このゲノムDNAを直接、またはゲノム増幅を介して、ギガシーケンサー(ロシュGS Jr.ならびにイルミナMiSeq)でのショットガンゲノムシーケンスを実施した。その結果、リピート領域の問題等によりcompleteまでは至っていないものの、コンティグ数106、最大長約100kbの配列を決める事ができた。このデータより、本共生体の推定ゲノムサイズは約1.6Mbであり、34kb程度のプラスミドを保持していることが明らかとなった。また、平均GC含量は35%程度で、他の細胞内共生体の例と同じくゲノムにATバイアスがかかっていることも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は真正細菌共生体のゲノム解析であり、完全には決定されていないものの、27xのカバー率から考えて遺伝子情報自体はほぼ全て入手することができたと思われる。また、コンタミネーションの少ないゲノム調製法が確立された点も大きく、今後シーケンスを追加するなどの努力で完全長の決定に至ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず第一に、完全長配列を得るための取り組みを重点的に進める。具体的には、異なるアセンブラーによる解析やリピート領域の処理等、インフォマティクス的な改良により完全長配列の復元を目指す。それと同時に、スキャッホールド形成を目的として、PacBio RS等のロングリードが可能なシーケンサーによる解析も試みる。完全長配列が得られない場合においても、イルミナのリードを用いてホモポリマーの補正を行った後に、遺伝子のコード状況について検討を行う。その上で、共生の鍵になる機能性をゲノム情報から探し出し、それらの発現や機能性の確認を実験的に検証していく予定である。
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