2012 Fiscal Year Annual Research Report
細菌を細胞小器官とする窒素固定藻類の創製
Publicly Offered Research
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
24117519
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
春田 伸 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50359642)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 微生物 / 進化 / 窒素固定 |
Outline of Annual Research Achievements |
河床礫から緑藻を含むバイオフィルムを採取し、窒素固定条件で細菌を単離したところ、Xanthobacter属およびAzotobacter属と考えられる細菌を得ることができた。また、採取した河床礫バイオフィルムを、窒素化合物を欠いた独立栄養培地を用いて光照射下で継代培養を繰り返した。光照射条件等を変えることで、緑藻が安定して生育する培養系を複数、取得することに成功した。顕微鏡観察の結果、得られたすべての培養系に糸状性の緑藻を確認できた。培養系の多くにヘテロシスト形成性シアノバクテリアが緑藻と共存している様子が観察された。一方、シアノバクテリアが検出されなかった培養系から細菌を単離したところ、好気性窒素固定細菌を得ることができた。系統解析の結果、Aquincola属細菌と考えられた。ここで共存していた緑藻を分離し、18S rRNA遺伝子の塩基配列を解析したところ、Chaetophora属と考えられた。 得られたAquincola属細菌の窒素固定条件を検討し、酸素や窒素ガスの供給および炭素源の最適化を図った。同時に、得られた緑藻の至適生育条件を探った。これらの条件をもとに、両菌の混合培養試験を開始した。それぞれの微生物を、有機物または窒素化合物を含む培地で別々に前培養し、細胞を充分に洗浄したのち、混合培養した。Aquincola属細菌の添加によって、窒素化合物制限下での緑藻の生育が促進される様子が観察された。顕微鏡観察の結果、緑藻の細胞表面に窒素固定細菌が付着していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑藻と共存する窒素固定細菌を複数、得ることができた。シアノバクテリアと緑藻との共生系のほかに、当初の目的であった好気性窒素固定細菌と緑藻の共生系の構築にこぎつけることができた。培養条件や混合条件によって、この共生系が影響を受けることを見いだしている。また、細胞間の密な相互作用を示唆する観察結果も得られ、次年度における共生システムの解明に向けた準備が整った。 さらに、窒素固定能を有する紅色光合成細菌を選別し、その窒素固定特性(酸素に対する耐性、窒素ガスに対する親和性、照射する光の強度や波長による影響等)の解析を進めており、緑藻との新たな共生系の確立に向けた知見を集積することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた複数の共生系について、それぞれの共生系の成立に最適な条件を、細胞レベル、代謝フラックスレベル、遺伝子発現レベルで明らかにしていく。そのために、培養・混合条件を最適化し、緑藻および窒素固定細菌について、自由生活時と共生生活時の生理状態の違いを解析する。また、緑藻が固定した二酸化炭素および細菌が固定した窒素の動態分析を進める。さらに、コンピューターシミュレーションも活用して、実験から得られる情報を統合し、共生系の代謝バランスおよび制御システムを記述する。 共生系の物質・エネルギーフローを多角的に解析するため、窒素固定細菌としてシアノバクテリアや好気性窒素固定細菌だけでなく、紅色光合成細菌を含む新たな共生系の構築も進める。
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