2012 Fiscal Year Annual Research Report
宿主細胞と光合成の協調による葉緑体ゲノム複製制御の分子機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
24117523
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
壁谷 如洋 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特任研究員 (20462674)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 葉緑体 / DNA複製 / レドックス / ジスルフィド結合 / 細胞内共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
24年度の計画①光合成に駆動される葉緑体DNA複製の制御の検証、②葉緑体DNA複製装置の構成タンパク質の同定と解析、③葉緑体DNA複製のON/OFFスイッチ変換の分子機構の解明について解析を行った。 ①予備研究で得られていた葉緑体DNA複製が光合成によって駆動されていることを再検証した結果、確かにクラミドモナスでは光合成の電子伝達阻害剤であるDCMUを加えることで葉緑体DNA複製は阻害された。しかし、従属栄養条件完全暗所下でも葉緑体DNAは複製されることを明らかにし、葉緑体DNA複製には必ずしも光合成は必要でないことが分かった。一方で、葉緑体DNAは細胞内が還元的になると複製され、酸化的になると複製が行われないことを、活性酸素除去剤および誘導剤を用いた実験によって明らかにした。この結果から、葉緑体DNA複製はレドックスによって制御されていることが示された。 ②葉緑体DNA複製装置を構成する因子、特にヘリカーゼおよびプライマーゼの同定を予定していたが、他のグループからシロイヌナズナにおいて葉緑体で働くヘリカーゼおよびプライマーゼの機能を持つタンパク質Twinkleが報告された。また、紅藻シアニディオシゾンには、シアノバクテリア由来のヘリカーゼおよびプライマーゼが存在していることを塩基配列データから見つけた。 ③レドックスによる葉緑体DNA複製制御機構には、葉緑体核に含まれるタンパク質のジスルフィド結合が関与していることを示唆するデータが得られている。シアニディオシゾンで現在知られている葉緑体DNA複製因子について、組換えタンパク質を用いてin vitroでジスルフィド結合を形成し得るか検討した。その結果、葉緑体のDNAポリメラーゼであるPOPタンパク質およびヘリカーゼであるDnaBタンパク質は酸化的になるとジスルフィド結合を形成することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度で予定していた、葉緑体DNA複製装置の因子の探索については、in silicoでヘリカーゼおよびプライマーゼを見つけたことおよび他グループから別のタンパク質が報告されたため、実施しなかった。一方、本研究において葉緑体DNA複製のON/OFFスイッチ変換の分子機構の解明が最も重要なものである。24年度の計画では、スイッチに関与する因子の探索を予定していたが、すでに葉緑体のDNAポリメラーゼとヘリカーゼがスイッチの分子であり、その分子機構はジスルフィド結合の酸化還元である可能性を示唆するデータが得られており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今のところ組換えタンパク質を用いてin vitroで解析をしているが、25年度ではin vivoでも検証する。実際葉緑体DNAが複製しない暗所で葉緑体のDNAポリメラーゼやヘリカーゼの分子内にジスルフィド結合が形成されているのか、また明所ではジスルフィド結合が還元され切断されているのかを明らかにする。また、ジスルフィド結合を形成出来ないようなアミノ酸置換したタンパク質を細胞に導入し、葉緑体DNA複製への影響を調べる。 一方で、共生前と後でどのようにDNA複製制御機構が変わったのかを明らかにするため、当初の計画では予定していなかったが、シアノバクテリアのDNA複製制御機構についても解析を行う。
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