2012 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫系の細胞質内核酸認識経路が自然炎症を引き起こす仕組み
Publicly Offered Research
Project Area | Homeostatic inflammation: Molecular basis and dysregulation |
Project/Area Number |
24117702
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
押海 裕之 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50379103)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 炎症性サイトカイン / ウイルス / 肝炎 / ヘリケース / ユビキチン |
Outline of Annual Research Achievements |
自然免疫は獲得免疫系の認識に必須である重要な免疫システムである。自然免疫は、微生物の構成成分(PAMP)を認識し、炎症性サイトカイン産生や獲得免疫系の活性化を誘導することが知られているが、最近の研究から、自然免疫が自己の物質をも認識し炎症を誘導することが示唆されてきている。細胞内のウイルス認識センサーであるRIG-I様受容体には、RIG-I分子とMDA5分子が存在するが、RIG-Iが、自己のmRNAの分解産物を認識することや、細胞内のポリユビキチン鎖を認識し炎症性サイトカインの産生を誘導することが報告されている。またMDA5遺伝子のSNPが自己免疫疾患の一つであるI型糖尿病発症と相関があることが報告されている。このことから、これらRIG-I様受容体も自然炎症に深く関与していると考えられる。しかし、その分子基盤は十分には解明されていない。 我々はこれまでに、上記のRIG-I分子の活性化に関与する分子として独自にRiplet分子、DDX60分子の二つの分子を発見した。また、細胞質内に異所性に存在するDNAを認識する新規分子としてLupleと名付けた分子も発見した。平成24年度は、これらの内、DDX60遺伝子を破壊した遺伝子改変マウスを作製し、DDX60分子が、自然炎症に果たす役割の詳細を解析した。その結果、DDX60遺伝子をノックアウトするとRIG-I依存的な炎症性サイトカイン産生のシグナルが大きく減弱することを、繊維芽細胞とマクロファージを用いて解明した。これは、DDX60がRIG-I依存的な自然炎症に重要な役割を果たすことを示唆している。 さらに、上記のRiplet分子が炎症に果たす役割の解明も同時に行い、C型肝炎ウイルス感染時の、肝臓での炎症にRiplet分子がどのように関与するかを解明した。また、Luple分子が炎症を誘導する分子機構を試験管内の解析により解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では平成24年度にDDX60ノックアウトマウスを用いた解析では以下の3点について計画していいた。1)樹状細胞およびマクロファージに於ける炎症性サイトカイン産生能の検討。2)DDX60依存的な自然免疫応答が獲得免疫に果たす役割の検討。3)マウス個体へのウイルス感染実験。これまでに、野生型とDDX60ノックアウトマウスより樹状細胞およびマクロファージを単離し、RIG-IやMDA5への資源存在下でのサイトカイン産生を測定し、DDX60の果たす重要性を解明した。また、獲得免疫系の活性化に重要な樹状細胞を用いて、樹状細胞機能へのDDX60の果たす役割も同時に解明した。マウス個体へのウイルス感染実験に向けて、すでに予備実験を終えており、マウスの匹数を増やしウイルス感染の本実験を実施する予定である。 上記のDDX60のノックアウトマウスの解析に加えて、Riplet分子やLuple分子の機能解明も平成24年度に計画していたが、これらについても順調に研究を進めた。Luple分子の解析に於いては、従来の計画どおり、試験管内での解析から、Luple分子のN末端領域に存在するドメインが、転写因子のNF-kappaBの活性化に必要であることを解明し、また、細胞質内に異所性に存在するDNAに対して生じるIL-6の産生にLupleが関与することも解明された。また、Luple分子は、もともと自己免疫疾患の一つで、自己抗原としても単離されており、今後、Lupleが自己のDNAによる自然炎症にどのように関与するかを詳細に検討する予定である。 Riplet分子の解析に於いても、RIG-Iの翻訳後修飾に関与するRiplet分子が、どのようにRIG-Iを活性化するかの詳細な分子機構を解明することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞質内の核酸により誘導される自然免疫応答が自然炎症の中でどのような役割を果たすかは、自己免疫疾患マウスモデルに我々が世界に先駆けて作製した、RipletやDDX60ノックアウトマウス、さらに、独自に作製したTICAM-1 (別名TRIF), IPS-1等のノックアウトマウスを使用することで、新たな自然炎症のメカニズムを解明することが可能になる。我々が発見した遺伝子がI型糖尿病やアレルギーを含む自己免疫疾患にどのような役割を果たすかを詳細に解明する。 自然炎症の終息には、免疫の適切な制御が必須である。近年発見された制御性T細胞の活性化や、その機能が注目されている抑制性のサイトカインのIL10の産生は、Toll様受容体による制御機構については詳細な報告が多数あるものの、細胞質内リガンドに起因するRIG-I様受容体依存的な制御についてはまだ十分な研究がなされておらず、これらについて詳細に解明する。 細胞質内核酸認識経路に関与するノックアウトマウスとして我々は、IPS-1ノックアウトマウスとRipltノックアウトマウスとDDX60ノックアウトマウスを保有している。また、IFN-alpha受容体欠損マウスとしてIFNARノックアウトマウスを保有しており、これらのマウスを用いて、VSVやHCV感染時の免疫活性化と抑制がどのように制御されているかを詳細に検討する。
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Research Products
(5 results)