2012 Fiscal Year Annual Research Report
内因性リガンドとしての遊離脂肪酸による生活習慣病発症機序の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Homeostatic inflammation: Molecular basis and dysregulation |
Project/Area Number |
24117703
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
眞鍋 一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70359628)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 慢性炎症 / 生活習慣病 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病の基盤となっている慢性炎症は、急性炎症の性質を示さずに最初から低レベルで慢性炎症の特徴を有したプロセスとして始まる。このような慢性炎症の多くは、内因性リガンド(遊離脂肪酸等)による自然免疫系の活性化に起因する自然炎症と考えられるが、同様に自然免疫系が外来性リガンドを認識して始まる急性炎症となぜ異なるプロセスを引き起こすのか、その分子機序は明らかではない。本研究計画では、内因性リガンドとして遊離脂肪酸に着目し、外来性病原リガンドと異なる内因性リガンドに特有な自然炎症の分子機序を解析するとともに、生活習慣病における意義を検討する。また多価不飽和脂肪酸による自然炎症シグナル修飾による治療介入の可能性について評価する。①膵β細胞とマクロファージにおいては遊離脂肪酸とLPSへの細胞応答に相違が見られる。この分子機構を検討し、AktシグナルやTLR4シグナルの活性化が、β細胞とマクロファージで異なることを明らかとした。②遊離脂肪酸により活性化される自然炎症の2型糖尿病、心不全、動脈疾患、慢性腎臓病の発症・進展への寄与について検討する。特に、脂肪組織において、遊離脂肪酸が急速な単球・マクロファージの移動を誘導することを見いだした。③多価不飽和脂肪酸による炎症プロセスへの介入が病態にどのように影響するかを検討し、自然炎症を標的とした治療法開発の基盤的技術開発と評価を進める。特に、アクティブなリモデリング機序への抑制効果と、その病態への影響を検討するとともに、その分子機構を明らかにするため、慢性腎臓病モデルと腹部大動脈瘤モデルへのEPAの影響を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね、初期の計画通りに進んでいる。特に、外来性リガンドと内因性リガンドへの応答メカニズムの相違について検討し、内因性リガンドであるパルミチン酸と外来性リガンドであるLPSにおいて、膵β細胞とマクロファージで、時間的にも大きく異なるシグナル経路が活性化することを見いだした。また、EPAが大動脈瘤の進展を抑制するという臨床的にも重要な知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
①膵β細胞とマクロファージにおける遊離脂肪酸とLPSへの細胞応答の相違とその背景にある分子機序の解析 膵β細胞とマクロファージにおけるTLR4応答の相違の分子機序をin vitroでさらに検討する。内因性リガンドが急性炎症を経ずに慢性炎症(自然炎症)を惹起する分子基盤の解明を目指す。 ②遊離脂肪酸による2型糖尿病、心不全、動脈疾患、慢性腎臓病発症機序の解析 前年度の解析により、特に脂肪組織において、遊離脂肪酸の投与により急速な免疫細胞の変動が生じることが明らかとなった。そこで、この単球・マクロファージの移動を促進する分子機序と、その病態における意義を解析する。 ③多価不飽和脂肪酸による炎症プロセスへの介入と治療展開 前年度の解析を引き続き進め、EPAのマクロファージへの影響とその作用機序を明らかにする。特に、大動脈瘤における組織リモデリングをモデルとして、マクロファージ及び他の細胞へのEPA作用の意義を検討する。また、その作用の分子機序を解析する。
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Research Products
(5 results)