2012 Fiscal Year Annual Research Report
炎症を感知する新規内因性リガンドセンサーの作動機構解明とがん進展における役割
Publicly Offered Research
Project Area | Homeostatic inflammation: Molecular basis and dysregulation |
Project/Area Number |
24117711
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
阪口 政清 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70379840)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 炎症 / がん / S100タンパク質 / 受容体 / 転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新規S100A8/A9受容体の発見(R8/R9 仮称)を基盤に、炎症-がん進展 (増殖、転移) 応答ネットワーク形成の分子機構の一端を明らかにすることを目指す。そしてその成果を、将来、当新規受容体を標的とする新しいがん治療法開発や治療薬のスクリーニングシステム開発の基盤にしようというものである。当該年度では、R8, R9受容体のS100A8, A9に対する特異性を決定し、受容体下流信号伝達の分子機構を明らかにすることを目標とした。具体的な成果としては、以下の通りである。 R8には、R8αとR8β(スプライシングバリアント)が存在することを見出した。これら受容体(R9、 R8α、R8β)は、それぞれホモダイマーあるいお互いにはヘテロダイマーを形成する。結合解析からR9とR8αは、S100A9と、R8βは、S100A8、A9と結合することが判明した。受容体どうしのダイマー状態が、S100A8/A9への親和性を変化させるのである。次に下流信号伝達を解析した。R9の下流にはTRAF2がアダプタータンパク質として機能し、これがNFkB活性化とRac/Cdc42活性につながっていた。一方、R8αとR8βもTRAF2をアダプタータンパク質として持つが、これ以外に増殖誘導に密接に関わるアダプタータンパク質(X)も所有することが明らかとなった(増殖誘導性Erk分子の強力な活性化につながる)。この点が、R9と異なっていたのである。以上、S100A8/A9のR8/R9の結合特異性と受容体シグナル伝達分子機構のKeyとなる一端を解明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度での計画では、研究実績の概要に記述しているように目標の大半を達成するに至った。従って、進捗状況は良好であると考える。但し、受容体シグナルが及ぼす細胞形質の変化の解析がやや遅れている。詳細な成果は以下の通りである。 (1) R8, R9とS100タンパク質の結合: S100AA8、A9を、受容体(R8α、R8β、R9)を強制発現させたHEK293細胞の培養系に添加した。細胞を回収し、両者間の結合を解析した。結果、S100A8に対する特異的受容体としてR8βを同定することに成功した。R8αは、R9と同様にS100A9への強い結合性を示した。 (2) R8とR9の2量体形成: 次に、R8α, R8β, R9の3者間で、どのような2量体形成が起こるのかについて検討した。各受容体(R8α, R8β, R9)の相互作用の解析結果から、R8α, R8β, R9はそれぞれホモダイマー形性能(R8α/R8α、R8β/R8β、R9/R9)があること、そして、R8α/R8β、R8α/R9、R8β/R9のヘテロダイマー形成も可能であることが判明した。 (3) R8とR9のアダプタータンパク質:R8とR9の細胞質領域には、TRAF結合モチーフが存在する。そこで、TRAF2に関して、R8とR9の細胞質領域への結合能を検討した。R8あるいはR9の細胞質領域とTRAF2をHEK293に同時トランスフェクションし、R8あるいはR9の細胞質領域を免疫沈降した。結合性アダプタータンパク質をWBにより解析したところ。R8とR9に、TRAF2が共通して結合してくることを見出した。さらにR8には、TRAF2以外に増殖誘導に密接に関わるアダプタータンパク質(X)が結合してくることが明らかとなった(増殖誘導性Erk分子の強力な活性化につながる)。この点が、R9と異なっていた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は、以下の通りである。 (1) 各受容体(R8α、R8β、R9)シグナルが及ぼす細胞形質の変化の解析を終える。 (2) 各受容体(R8α、R8β、R9)が、がん組織内でどのような細胞種に発現があるかを解析する。 (3) 各受容体(R8α、R8β、R9)のドミナントネガティブ体を安定に発現するメラノーマクローンを作製し、マウス個体内に移植して、そのがん進展過程を解析する。また、尾静脈投与による肺転移能の検討も行う。
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Research Products
(18 results)