2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規トランスジェニック細胞樹立の基盤技術確立と合成生物学への応用
Publicly Offered Research
Project Area | Synthetic biology for the comprehension of biomolecular networks |
Project/Area Number |
24119506
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野村 渉 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (80463909)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 蛋白質 / ゲノム / 遺伝子 / 酵素 / 合成生物学 / 分子進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では遺伝子回路研究を初めとする合成生物学研究に有用になる哺乳類細胞での内因性遺伝子に対するエンジニアリング技術基盤を確立することを目的とした。配列特異的にgenetic engineeringが行えるジンクフィンガー融合酵素を用いて(1)化合物によるコンディショナルな遺伝子ノックダウンを行えるシステムの構築(ジンクフィンガーヌクレアーゼ:Zinc Finger Nuclease(ZFN)を用いる)、(2)耐性致死遺伝子研究用細胞株の樹立とその解析(ジンクフィンガーリコンビナーゼ:Zinc Finger Recombinase (ZFR)を用いる)、(3)核内動態の観察と解析手法の確立、に取り組むことを当初の計画として立てた。平成24年度末までの研究目標として(1) 有機小分子化合物で切断を誘導できるZFN遺伝子の構築、(2) in vitro翻訳系による各タンパク質の発現確認とラパマイシンによるDNA切断誘導実験、(3) 胎生致死遺伝子欠損細胞の構築準備(ジンクフィンガーリコンビナーゼの構築)を具体的な取り組みとして掲げていた。化合物を用いたコンディショナルな遺伝子ノックダウンを行える系については必要なタンパク質は構築を終え、現在DNA切断条件の最適化に関して検討を行っている。ノックアウト細胞の創出に関する研究においては標的遺伝子としてhTERT(テロメア逆転写酵素)、ASH1、ATF3などを選定し、それぞれ標的とする遺伝子配列に対して特異的に結合するジンクフィンガードメインを構築することができた。特に優れたDNA結合活性を持つもので10 (nM)に匹敵する解離定数を有するドメインを見出すことができた。ヌクレアーゼに関してはin vitro翻訳系において構築したジンクフィンガードメインとヌクレアーゼドメインの融合酵素を構築しDNA切断を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZFNを用いたノックアウト細胞の作製に関して標的遺伝子配列に対するジンクフィンガードメインの選択方法、ヌクレアーゼによる変異導入の検出実験の手法に関してどのような遺伝子に対しても行える基礎的知見を得ることができた。このため、初年度の目標として十分に達成できたと考えられる。標的遺伝子としては、1) AAVS1、2)hTERT(ヒトテロメラーゼ)、3)ASH1、4)ATF3に対するヌクレアーゼを構築し、in vitroでの切断、ゲノム遺伝子での変異導入をAAVS1に対するZFNをポジティブコントロールとして確認し、成果が出始めている。また、更に効率的にノックアウト細胞を得る手段の一つとして、ZFNによる切断箇所にドナー遺伝子を導入し、薬剤耐性マーカーによるセレクション方法に関しても手法を確立した。ジンクフィンガーリコンビナーゼに関しては反応効率の向上に関する基礎的知見を得ている。初年度の取り組みとして、2年間の研究において必要となる研究資材である人工タンパク質群をすべて構築することができたことは次年度の研究の発展に大きく貢献する成果である。また、遺伝子ノックアウトの研究系としてAAVS1遺伝子に対するコントロールZFNを用いて構築できたことはZFNの活性評価を加速させると考えられる。ZFRに関してはトランスフェクションによる細胞内導入で発現させたタンパク質の細胞内局在を蛍光を用いた免疫染色によって確認することができた。従って、同様の系を用いた場合、用いたZFRは細胞内での発現によって細胞核内にすべて送達されることが示された。以上のように、初年度の研究目標においていた事項に関してはすべて取り組むことができ、良好な結果を得ることができている。従って、次年度の研究も加速的に推進できるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画として(1)化合物誘導型DNA二重鎖切断に関して、構築したタンパク質ドメインをin vitroで解析すると同時に細胞内導入についても検討し、細胞核内でのゲノム切断に関する知見を得る。(2)平成24年度に得られたZFNで標的としている遺伝子のノックアウトに関して細胞の表現型への影響を詳細に解析する。(3)ZFNに関してドナー遺伝子を多様に設計し、細胞内においてトランスジェニックな遺伝子の発現制御へと活用する方法を確立する。(4)ジンクフィンガーリコンビナーゼについて細胞内発現の最適化による反応効率向上を解析し、標的遺伝子のノックアウト反応へと利用する。という4点を挙げていた。具体的にはin vitroで標的DNA切断が確認されたZFNに関して核画分を用いたウェスタンブロッティングや蛍光免疫染色法によって核内への局在を確認し、さらにDNA切断による変異導入効率などを定量的に測定する。細胞の表現型への影響に関しては、樹立した培養細胞のみならず、プライマリー細胞を用いることで正常な染色体状態の細胞におけるノックアウト効果に関する知見を得ることにする。ノックアウトされた遺伝子の下流に存在するタンパク質の発現状態などを詳細に解析する。ドナー遺伝子に関しては、薬剤耐性マーカーとしてピューロマイシン耐性遺伝子を用いているが、さらにバリエーションを増やし、蛍光タンパク質遺伝子なども活用することで様々なセレクション方法、検出方法が可能になるように系を構築する。ZFRについてはコドン配列を最適化した遺伝子を用いることで反応効率の向上を検討するとともに、ZFRによるDNA組み換え反応の検出系の確立や10kbを超えるような長い遺伝子や染色体間の組換え反応などの可能性に関しても検討を行う予定である。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Low-molecular-weight CXCR4 ligands with variable spacers.2013
Author(s)
Narumi T, Aikawa H, Tanaka T, Hashimoto C, Ohashi N, Nomura W, Kobayakawa T, Takano H, Hirota Y, Murakami T, Yamamoto N, Tamamura H
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Journal Title
ChemMedChem
Volume: 8
Pages: 118-124
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Pharmacophore-based small molecule CXCR4 ligands.2012
Author(s)
Narumi T, Tanaka T, Hashimoto C, Nomura W, Aikawa H, Sohma A, Itotani K, Kawamata M, Murakami T, Yamamoto N, Tamamura H
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Journal Title
Bioorg. Med. Chem. Lett.
Volume: 22
Pages: 4169-4172
DOI
Peer Reviewed
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