2012 Fiscal Year Annual Research Report
機能モジュールライブラリーから構築した環境応答型合成プロモーターシステムの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Synthetic biology for the comprehension of biomolecular networks |
Project/Area Number |
24119512
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上平 正道 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40202022)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 合成生物学 / バイオテクノロジー / 遺伝子発現制御 / 環境応答 / 遺伝子プロモーター |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子機能単位を組み合わせることによって細胞内で機能する遺伝子回路を作製し、確実に細胞ゲノム上で機能する遺伝子発現ユニットを構築していくための技術開発に取り組み、応用することを目的としている。本年度は、時間的、空間的、量的な遺伝子発現制御を可能とする実用的なシステムの構築を行った。まず、環境応答遺伝子発現システムとして、温度誘導型大量発現システムの開発を試みた。HSP70B’プロモーターから熱ショック応答に関わるHSE領域を取出し、トランスアクチベーターを用いる人工プロモーターによる大量発現システムを組込んだハイブリッドプロモーターを設計し、熱ショックをスイッチとする大量発現システムを開発した。このシステムの有効性について、目的遺伝子としてガン殺傷効果があるサイトカインTNF-α遺伝子あるいはHSV TK遺伝子にすることでガンに対する温熱遺伝子治療法を提案し、培養細胞レベルで温熱誘導的に目的遺伝子発現を制御することが可能であり、導入遺伝子発現によって細胞死を誘導できることがわかった。また、遺伝子発現ユニットを確実に細胞ゲノムに組込むための技術開発についても検討を行い、酵素的な遺伝子組換えシステムであるCre-loxPによる配列特異的な遺伝子導入反応をレトロウイルスベクター内に組込んだハイブリッドウイルスベクターの作製に成功した。このウイルスベクターを用いてあらかじめ細胞ゲノムに組込みターゲットサイトを有するCHO細胞に遺伝子導入を行ったところ、スクリーニングされた全ての細胞で標的ゲノム部位に導入遺伝子が組み込まれていることがわかった。これらの方法の開発によって、人工的に設計した遺伝子発現ユニットや遺伝子回路を細胞ゲノムのあらかじめ指定した場所に組込むための有用なツールが開発できたものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合成生物学における構成的な手法により、温熱誘導型の遺伝子大量発現システムの開発を行い、システムが機能することを確認した。このシステムの実用性を示すために、ガンの温熱遺伝子治療への適用を考え、目的遺伝子として細胞死を誘導する治療用遺伝子にしたところ、培養細胞レベルで熱ショックを引き金とした遺伝子発現誘導により細胞が死滅することがわかった。また、配列特異的な遺伝子導入を可能とするために、組換え酵素依存的な遺伝子組込みを可能とするウイルスベクターの作製に成功した。これらのことより、おおむね順調に研究目的を達成していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した温熱誘導型の遺伝子大量発現システムがガンの温熱遺伝子治療に有効であるかについてさらに検討をすすめることを目的として、担ガンマウスを使った動物実験により検証する。磁性粒子は交番磁場中で発熱するため、磁場照射をスイッチとした遺伝子発現システムとして使用する。磁性粒子を担ガンマウスのガン組織に注入したのち、温熱誘導型治療遺伝子発現ベクターをガン組織に導入し、磁場照射によって組織の加温を行うとともに温度を制御する。ガン組織に対して治療用遺伝子発現の効果があるかについて検討する予定である。さらに、他の環境応答型遺伝子発現ユニット作製についても検討を行う。ティッシュエンジニアリング分野における利用を考慮して、細胞ダメージ応答や酸素濃度応答の遺伝子発現ユニットを新たに構築し、遺伝子発現システムとしての有効性を評価する。
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Research Products
(13 results)