2012 Fiscal Year Annual Research Report
枯草菌細胞内への細胞周期回路の人工合成
Publicly Offered Research
Project Area | Synthetic biology for the comprehension of biomolecular networks |
Project/Area Number |
24119513
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
末次 正幸 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00363341)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | DNA複製 / 細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌における細胞周期の回転は、「複製装置因子クランプの動態を基盤とした複製開始蛋白質DnaAの活性オシレーション」によってもたらされる。本研究は、枯草菌という異種細胞の中に、大腸菌DnaA制御系を組み立て、そのオシレーションを再現することを目指すものである。 枯草菌内に発現した大腸菌クランプは染色体複製部位へと局在することが検出された。これは大腸菌クランプが枯草菌染色体DNA上に導入されていることを示す。大腸菌においては、DNA導入型クランプに依存して、DnaAの制御的不活性化が進行する。この反応は試験管内再構成されており、原理的には枯草菌染色体DNA上に導入された大腸菌クランプを利用して枯草菌内でも再構成できると考えられる。そこで、枯草菌への大腸菌DnaAの導入を試みた。枯草菌自身もDnaAホモログを複製開始因子として用いているため、大腸菌DnaAの発現は細胞増殖阻害をもたらしたものの、発現量を制御することで、この導入を成し遂げた。また、導入した大腸菌DnaAの挙動や活性を検出すべく、蛍光蛋白質やアフィニティータグ融合型の大腸菌DnaA導入株も構築した。 クランプは染色体複製終結後、DNAから解離する。DNAからクランプが解離すれば、DnaAの不活性化反応が解除され、DnaAの再活性化を導く事が可能である。枯草菌染色体DNA上に導入された大腸菌クランプの解離を導くことが可能であるかを検討するため、大腸菌クランプ解離の候補因子について、これを蛍光蛋白質融合型大腸菌クランプと共発現する枯草菌株を構築した。 さらに、導入した大腸菌DnaAの活性変動をリアルタイム検出するため、活性型DnaA依存性プロモータを利用する計画を立てている。そこで大腸菌における、活性型/不活性型DnaAに応じて変動する結合DNA領域をゲノムスケールで解析すべく、DnaA ChIP-seq系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
枯草菌は、大腸菌と類似した染色体複製システムを有するため、複製に機能する大腸菌蛋白質の導入は当初困難である事が予想されていた。解決法として枯草菌染色体複製起点oriCの変異体利用等も計画していたが、大腸菌蛋白質の発現量を薬剤誘導製プロモーターを利用してコントロールする事で、その導入が可能である事が分かった。 大腸菌DnaAの活性の変動を検出すべく、活性型DnaAに依存した遺伝子転写制御に注目し、この検出システムを構築するための解析を進めた。DnaA制御プロモーターの下流に蛍光蛋白質を導入すれば、生きている枯草菌の中でリアルタイムに大腸菌DnaAの活性変動を検出できると期待される。活性型DnaAに依存した遺伝子転写制御については、これまでゲノムスケールでの解析がなされておらず、効率よく活性変動に応答するようなプロモーターも見つかっていない。そこで、DnaAのChIP-seq解析を進めている。このために構築したシステムは蛋白質にタンデムアフィニテイータグを融合し、これを回収する新規な方法である。予備検討によりゲノム上におけるDnaA結合領域の結果を得る事ができている。現在、DnaAの活性型、不活性型を人工的に操作し、そこでのDNA結合パターンの変動を検出すべく、計画を進めている。これは初年度の計画には含まれていなかったが、新学術領域ゲノム支援における次世代シーケンサーによる解析支援をうけることができたため、進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
枯草菌内に大腸菌クランプおよび大腸菌DnaAを発現させるシステムを構築できたので、今後、さらにDnaA不活性化に必要なもう1つの因子であるHdaを導入する。これによって、DnaA不活性化反応を導く事ができる。導いた不活性化反応を解除するにあたっては枯草菌染色体DNA上から大腸菌クランプを解離することが必要である。構築済みのクランプ解離候補因子導入株を利用して、この検討にあたる。 DnaAの活性変動を検出するシステムとして、ラジオアイソトープ標識培地で培養した枯草菌からアフィニティータグ融合型大腸菌DnaAを回収、解析する手法を計画している。一方で、この手法は困難が予想される。そこで、活性型DnaAに依存したプロモーターを利用し、その下流に蛍光蛋白質を導入し、解析するシステムの構築を並行して進める。このシステムでは生きている枯草菌の中でのリアルタイムな大腸菌DnaAの活性変動を、蛍光顕微鏡を用いて簡便に検出できるものと期待される。活性型DnaAに依存して効率よく制御されるプロモーターをゲノムワイドに探索すべく、DnaAのChIP-seq解析を精力的に進めており、その結果を受けて今後、検出システムの構築をすすめる。
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Research Products
(4 results)