2012 Fiscal Year Annual Research Report
被災地で可視化した社会階層の健康と包摂(災害弱者、困窮者、孤立者)
Publicly Offered Research
Project Area | Elucidation of social stratification mechanism and control over health inequality in contemporary Japan: New interdisciplinary area of social and health sciences |
Project/Area Number |
24119701
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
麦倉 哲 岩手大学, 教育学部, 教授 (70200235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 貧困 / 階層 / 東日本大震災 / 被災地 / 脆弱性 / 失業 / 孤立 / 社会的包摂 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 本年度の研究目的:(1)大量観察調査関係、質的調査関係では、東日本大震災被災地の被災実態と避難直後から、復興までの様子を詳細に記録して、今後の分析にいかすために、継続的な調査を実施する。(2)ケース研究関係では、東日本大震災における被災弱者、生存を脅かされている階層、マイノリティに焦点を当て、ケース研究を進める。そのために、支援交流活動を進め、信頼関係やラポールを構築する。
2 実施内容と研究の進捗状況:(1)大量調査関係では、岩手県大槌町と山田町における仮設住宅入居者を対象とした被災2年目調査を実施した。(2)質的調査関係では、大槌町避難所代表者インタビュー調査の補充調査を実施した。(3)ケース研究を進めるための支援・交流の点では、被災地関係者との支援交流のために「三陸復興・大槌の部屋」というイベントを開催し、被災者相互ならびに被災者と非被災者との支援交流に貢献した。(4)ケース研究関係では、被災地における困窮層や、被災犠牲者、原発事故後の被ばく労働者など、災害弱者・被災者のケース研究に着手した。
3 本年度の研究成果:(1) 大槌町・山田町での仮設住宅調査関係では、大槌町・山田町での仮設住宅調査報告書を作成した。大槌町仮設住宅調査では、速報版を作成し、最終版は今後早急に作成する予定である。(学会報告2、その他1、2)(2)大槌町避難所運営では、大槌町避難所運営代表者へのインタビュー調査の結果について、論文にまとめた。(研究論文2、学会報告1)。(3) 被災者、生活困窮者、犠牲者などのケース研究では、原発労働者のケース研究を論文にまとめた。(研究論文1)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 2012年度には、大槌町全域で、仮設住宅入居者約500人を対象に、被災状況と復興状況の質問紙調査を実施し(個別面接法・留置郵送回収法の併用)、70%を超える方々から回答を得た。その結果を分析し、速報版を作成しつつ、被災地の方々向けに報告会を開いた。実施した調査では、被災地における貧困や階層について、多様な面から状況把握することができた。 2 そこから浮かび上がってきた点は、被災地の貧困は多層的だということである。災害社会学では、従前の脆弱性に焦点があたるが、被災地の生活困窮には、「従前からの生活困窮」と、「被災後の生活困窮」とがあること。精神面での厳しさについては、被災後時間とともに、「厳しさが軽減している層」もみられるが、「依然として厳しさが変わらない層」と、「かえって厳しくなっている層」も多く。全体では3分の2の対象層が精神的なつらさを抱えている。個々人の復興の度合いを100分率(20%刻み)で回答してもらうと、「0~20%未満」が一番多く、ついで「20~40%未満」であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度に実施した調査により、対象地域における貧困と階層化の状況の全体について把握することができた。調査協力者の年齢・性別、被災状況と復興状況について把握できたので、2013年度は、生活困窮層について、「従前からの困窮層」、「被災による困窮層」とを場合分けし、ケーススタディに入っていく。2012年度の調査により、調査協力者との信頼関係を構築してきたことにより、住所や連絡先を把握できるようになっているので、今後の調査において、インフォームド・コンセントにおける配慮を尽くしつつ、調査を深めていく予定である。本調査は、被災者が抱えるリスクと向き合うことになるので、関係井行政機関や被災者支援団体との一定の連携を図りつつ、研究成果へと結びつけ、また復興に関する政策提言にも結びつけたい。
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Research Products
(4 results)