2012 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の刺激方向予測に基づく運動意思決定に関与する神経回路機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Elucidation of neural computation for prediction and decision making: toward better human understanding and applications |
Project/Area Number |
24120502
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小川 宏人 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301463)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 昆虫 / 意思決定 / 学習 / 神経回路 / 予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,「昆虫が刺激予測によってモデルベースの行動内容を決定できるか」を検証するための新しい学習タスクの確立を目指した。ボール型トレッドミル上のコオロギに,10kHzのトーン音(手掛かり刺激)と気流刺激(忌避性無条件刺激)を組み合わせたトレーニングを行い,その前後でトレーニングに用いた10kHzと3kHzのトーン音に対する反応を計測した。その結果,静止したコオロギに対して条件付け刺激を与えた群では10kHz音に対して歩行運動を示すようになったのに対し,静止中・歩行中にかかわらず一定の間隔で条件付け刺激を与えた群では,変化はみられなかった。すなわち,コオロギは静止している状態でトレーニングした場合のみ,音と気流刺激を連合づけることができると考えられる。しかし,この実験ではトレーニング中に気流刺激に対するadaptationが生じてしまうため,多くの個体でトレーニングを終えることができなかった。そこで,気流刺激と電気ショックを組み合わせた条件付けを行い,その前後で気流刺激に対する反応を調べた。そのうち,1群は,トレーニング時にコオロギの周囲8方向から1回ずつ計8回気流を与え,別の群では側方1方向から10回刺激を与えた。その結果,前者ではトレーニング後に気流に対する歩行距離が伸び,刺激角度に対する依存性が大きくなった。一方,後者では歩行距離,刺激角度依存性ともに変わらなかった。すなわち,様々な方向からトレーニングを行うことによって,刺激に対してより正確な忌避運動を制御するようになる。以上の結果から,音を手掛かりとした行動決定タスクのためのトレーニングでは,静止中のコオロギに限定して8方向から気流刺激を行い,モデルフリーのタスクでは条件刺激のトーン音を固定した方向から与え,モデルベースのタスクでは常に気流刺激と同方向から与えるパラダイムが有効であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コオロギにおいて音と気流によるモデルベースの行動決定を行うための学習タスクを確立するために,トレーニング時のadaptationを減少させ,また自発的な歩行中はトレーニングを行わないことが重要であることが分かった。これらをふまえて,新しい学習タスクの構築にある程度めどをつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,学習タスクの細部を修正し,モデルベースの行動決定が行えるトレーニング課題を確立する。さらに,気流回避の歩行運動の開始および方向制御に関与する下行性ニューロンを探索し,それらの神経活動をモデルベースによる行動時とモデルフリーによる行動時で比較することによって,昆虫の行動決定の神経機構の解明に迫っていく。
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Research Products
(6 results)