2012 Fiscal Year Annual Research Report
意思決定に関わる神経回路のコネクトーム的解析
Publicly Offered Research
Project Area | Elucidation of neural computation for prediction and decision making: toward better human understanding and applications |
Project/Area Number |
24120508
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩崎 広英 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30342752)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | コネクトーム / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳は膨大な数の神経細胞がシナプスを介して神経回路を形成することで、さまざまな機能を実現する。本課題では意思決定に関わる神経回路の動作基盤の理解のために、広範囲に亘る神経回路の網羅的解析(コネクトーム)の技術的基盤の確立を目指している。具体的にはArray Tomography法と呼ばれる手法を改良することにより、広範囲に亘る神経回路の三次元再構築を実現する。次に、確立された技術を用いて、意思決定に関わると考えられている大脳皮質ー線条体ループの神経回路の解析を行う。特に、線条体における中型有棘ニューロンは直接路と間接路を構成しており、これらのニューロンは大脳皮質からの投射を受けているが、直接路および間接路を形成する線条体ニューロンにそれぞれ投射する大脳皮質ニューロンが大脳皮質内においてどのように分布しているのかについての大規模解析は未だなされていない。そこで本研究では、これらの大脳皮質ニューロンの分布について明らかにすることを最終的な目標とする。 本年度は主としてArray Tomography法の改良による技術的基盤の確立に従事した。Array Tomography法では超薄連続切片化した試料をスライドガラス上に回収し、それらの切片の光学顕微鏡像を取得し、重ねあわせることにより三次元再構築するが、連続切片の回収の過程は人力に依るため限度があった。そこで本年度は自動切片回収機ATUMを導入し、連続切片作成の自動化を推進した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は神経回路の網羅的三次元再構築のための技術的基盤を中心に行った。その結果、まずATUMによる自動切片回収システムを導入することができた。さらに、これまでは複数視野にまたがる広範囲の画像をつなぎ合わせるには技術的困難が伴い、ズレが生じることにより三次元再構築の妨げとなっていた。本年度の研究により、ズレを生じることなく広範囲に亘る顕微鏡像の重ね合わせが可能となり、今後の神経回路の三次元再構築にとって大きな障害を取り除くことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに導入した技術的基盤を用いて、直接路および間接路を構成する線条体神経細胞への大脳皮質の投射関係を明らかにしたい。このためには直接路と間接路を構成する神経細胞を可視化・同定することが必要であるが、福島県立医大・小林教授が確立された、ドーパミン受容体D1受容体とD2受容体のプロモーターを用いたトランスジェニックマウスでは、両者の神経細胞を特異的に光らせることが可能であり、既に購入・繁殖を始めている。これらのマウスに逆行性の蛍光色素を注入することで、大脳皮質からの投射を可視化し、その分布について明らかにする。今後は、大脳皮質神経細胞の標識法も比較検討する。
|