2012 Fiscal Year Annual Research Report
複雑性の異なる多数の意思決定戦略が混在する状況でのゲーム戦略の進化
Publicly Offered Research
Project Area | Elucidation of neural computation for prediction and decision making: toward better human understanding and applications |
Project/Area Number |
24120516
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石渕 久生 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60193356)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ゲーム戦略 / 戦略進化 / 進化計算 / 意思決定 / 学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
進化ゲームにおいて,戦略の表現方法と戦略進化の関係が注目を集めている.一般に,単純な戦略表現を用いた場合では,戦略の進化は早いが複雑な環境への対応が難しい.逆に,複雑な戦略表現では,長期的には複雑な環境に対応できる可能性を持つが,戦略の進化が遅くなる.本研究では,戦略表現の選択と戦略進化の関係という研究課題に対して,異なる戦略表現が集団内に混在する状況での戦略進化という新しい観点から研究を進めている.最終的には,(1)複雑性の異なる多数の戦略表現が集団内に混在する状況での戦略進化,(2)戦略表現が淘汰される状況における戦略表現と淘汰環境との関係,(3)複雑性の異なる戦略表現を同時に持つことができる個体の進化的優位性などに関する研究調査を行うことを目的としている. 平成24年度は,まず,進化ゲームに関する多くの研究において伝統的に用いられている「自分自身の戦略との対戦」という設定の影響を調査した.この設定は,現実世界でのゲームを考えると不自然であるが,過去の多くの研究で用いられている.本研究では,数値実験および利得の期待値解析により,自分自身との対戦が協調行動への進化に大きく貢献することを明確にした. 次に,2種類の異なる戦略表現が含まれる個体群における戦略進化を4種類や8種類の戦略表現が含まれる場合への拡張を試みた.このような拡張を行う過程において,「同じ戦略表現を持つ個体が近傍内に存在しないために交叉操作が適用できない」とう問題点を明確にし,近傍の拡張方法,同じ個体表現を持つ個体だけで近傍を構成する方法などの解決方法を示した.さらに,近傍サイズの設定方法が戦略進化に及ぼす影響も明らかにした. また,ファジィ識別器を行動決定に用いるための準備として,ファジィ識別器の進化的学習と識別器の分かりやすさとの関係に関する考察も進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公募研究で採択されている研究期間は2年間だけであるが,新学術領域の研究期間である4年間での研究として研究目標を設定しており,研究目標の2割程度は達成でき,また,今後の研究を行うための準備も十分に行うことができたので,研究は順調に進展していると言える.具体的には,「自分自身の戦略との対戦」や「近傍内に同じ戦略表現を持つ個体が存在しないような状況」などについて,問題点と影響,および,対応策について十分な議論ができたので,今後,2種類の戦略表現が混在する状況から4種類,8種類など多数の戦略表現が混在する状況へ数値実験の設定を拡張することが可能になり,平成25年度以降に様々な状況における戦略進化の調査研究を行うことができるようになった. また,格子空間にプレーヤが存在する空間型モデルだけではなく,連続的な平面上にプレーヤが存在する空間型モデルに対する近傍構造の設定も行ったので,プレーヤの数や位置に対する制約を大幅に緩和した状況での戦略進化の研究調査が可能になっている. さらに,研究実績としては挙げていないが,プレーヤがネットワーク上に存在する場合での戦略進化とネットワーク構造との関係を調べるための準備として,対戦相手数と戦略進化との関係の調査も進めており,研究は順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は,以下の方向で行われる. (1) 様々な戦略表現を用いた戦略進化に関する研究:様々な戦略表現としては,決定木やニューラルネットワーク,ファジィ識別器などを用いる予定である. (2) 個体表現レベルでの淘汰の導入:現在は,個々の戦略表現を持つプレーヤ数を一定にして数値実験を行っているが,高い利得が得られる戦略表現を用いるプレーヤの数を増やし,高い利得が得られない戦略表現を用いるプレーヤの数を減らすことで,戦略表現レベルでの淘汰を戦略進化に導入する. (3) 個々のプレーヤが複数の戦略を持つ場合での戦略進化モデルの提案:進化ゲームでは,個々のプレーヤが複数の戦略を持つ状況は考えられていないが,人間の意思決定では,反射的に何も考えずに意思決定を行う場合,直感的に考えて意思決定を行う場合,長い時間を使って熟慮した後で意思決定を行う場合など,複数の意思決定メカニズムを状況に応じて使い分けていると考えられる.そこで,本研究でも,個々のプレーヤが複雑性の異なる戦略を用いる場合での戦略進化モデルの構築を試みる. なお,このような主要な研究方向に加えて,個体群サイズや対戦相手数など,戦略進化モデルの基本的な設定の影響に対する調査研究も継続して行う予定である.
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Research Products
(5 results)