2012 Fiscal Year Annual Research Report
予測と意思決定に及ぼす自律神経活動の役割:認知神経科学と心身医学の融合
Publicly Offered Research
Project Area | Elucidation of neural computation for prediction and decision making: toward better human understanding and applications |
Project/Area Number |
24120518
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梅田 聡 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (90317272)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 予測 / 意思決定 / 自律神経 / 心身医学 / 内受容感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,これまでに研究が少なかった身体と認知に関する側面から,予測と意思決定のメカニズムを統合的な視点から探ることを目的としていた.実際にそれらの処理に深く関わっていると考えられる身体の機能,特に自律神経活動の機能を積極的に取り入れ,不安と予期の問題に焦点を当てた.研究の背景にある枠組みとしては,人間の活動を「心・脳・身体」という三者関係のダイナミクスの中で捉えることであった. 内受容感覚の敏感さを調べる実験研究では,心拍などを指標として,自らの内臓の動きをどの程度正確に把握できるかについて調べた.その結果,内受容感覚と不安の程度に強い相関を求め,それらがいかなる脳機能をベースとしているか,また,いかなる自律神経反応をもとに生起するのかを明らかにした. また,展望記憶のパフォーマンスを調べた実験研究からは,意図した行為をタイミングよく想起し,適切に実行できるかどうかのパフォーマンスに,やはり心拍をもとにした内受容感覚の程度が密接な関係を持つことを明らかにした.展望記憶のパフォーマンスには,不安の程度のようなパーソナリティと関係があるという,非常に間接的な結果はこれまでにも示されていたが,その詳細なメカニズム解明に結びつけることができたと考えられる.この結果は,予測と意思決定という側面に対しても,重要なデータの提起になり,不安のような側面をどのように介して,予測がいかに形成されるか,さらにそれが将来,ある事象が起きる確率やタイミングをいかに正確に予測できるかということの理解を深めたものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた研究の3分の2および,計画書提出の段階では立案に至っていなかった新たな研究を複数実施し,本研究の目的を確実に実行したものと自己評価する.一部,予備実験の段階で,本実験への移行を断念したプランはあるものの,それを補うべく,新たな実験を導入したことで,全体としては順調に推移しているものと評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
達成度の項目でも記述した通り,一部の研究の見直しはあったものの,おおむね,計画書通りの研究が実施されつつある.今後は,計画書にもある通り,対象を健常者から,不安障害や自律神経障害に拡大し,より幅広い観点,すなわち精神医学的・心身医学的な観点を組み込んだ研究を実施する.リクルートに当たっての準備も順調に進んでいる.予備実験を実施後,さらに新たな課題を用いた検討も視野に入れており,多角的な観点から本研究の目的達成に挑む予定である.「脳・心・身体」の因果関係を突き止めるため,媒介変数分析のような統計手法も積極的に取り入れる方向で進行させる予定である.
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Research Products
(8 results)