2012 Fiscal Year Annual Research Report
確率脳内シミュレータとしての大脳皮質自発発火活動と学習の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Elucidation of neural computation for prediction and decision making: toward better human understanding and applications |
Project/Area Number |
24120524
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺前 順之介 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (50384722)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 脳 / 神経 / ゆらぎ / 確率 / 情報処理 / 連想記憶 / ネットワーク / 確率共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質の自発発火活動は強いゆらぎを伴っているため、神経情報処理における単なる背景ノイズと見なされることもあったが、実際は感覚刺激の認知・推定・判断といった神経情報処理に重要な影響を与える事が解明され始めている。本研究計画では、この大脳皮質自発発火活動が何らかの意味で過去の感覚刺激の経験を脳内モデルとして蓄積したものであり、確率推論の先見知識として利用しているのではないかとの作業仮説に基づいて理論研究を進めた。まず自発発火活動の生成メカニズムを解明し、その自発発火活動が持つ神経情報処理における機能を解明することを試みた。その結果、大脳皮質の神経ネットワークが示す不規則で非同期な自発発火活動の実現には、大脳皮質興奮性神経細胞間に稀に存在する極めて強い興奮性シナプスの存在が重要なことを明らかにできた。この稀な強シナプスと多数の弱シナプスの結合の共存が重要であり、どちらか一方が欠けても安定した自発発火活動の維持は不可能になる。さらに、本年度の研究では、自発発火活動レベルの変調によって何らかの神経情報処理が実際に実現できる事を見るため、極端な強弱シナプスの共存を、連想記憶構造を持つ神経ネットワークモデルに導入してその能力と性質を調査した。その結果、細胞間での自発発火活動レベルの変調によって、埋め込まれた記憶パターンが安定して想起される事を明らかにできた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大脳皮質自発発火活動の安定した実現メカニズムを解明した点、及びその基盤となっている極端な強弱シナプスの共存を連想記憶モデルに組み入れることで、自発発火レベルの変調によって神経細胞モデルの発火確率をコントロールでき、実際に連想記憶パタンの安定した想起が実現できる事を示した点は、自発発火活動を用いた大脳皮質の確率的脳内シミュレーションの実現の基礎となる機能である。このことからこれらの研究成果により本研究計画の目標達成への重要なステップが実現できたと考えられる。一方、自発発火やその変調を刺激の経験によって獲得する学習過程に関しては十分研究が進展しておらず、次年度に残る重要な課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のこれまでの研究により、自発活動の学習過程との関連においては、単純な可塑性メカニズムでは自発活動の安定した維持と学習が実現できない事がわかってきた。そこで今後は、可塑性メカニズムの詳細な研究から、より大局的な学習過程の議論に研究の中心を移す計画である。詳細な可塑性実現メカニズムとしてはスパイク時間依存可塑性と呼ばれる、スパイク発火時刻に着目した可塑性メカニズムがよく知られているが、この可塑性メカニズムそのものではなく、発火率とその変調、あるいは発火相関の有無など粗視化された量に基づく可塑性を検討する予定である。また同時に、連想記憶モデル等の明確な構造を含んだ神経ネットワークモデルを対象とすることで、大脳皮質での確率情報が自発発火活動にどのように表現されるかの可能性も検討する予定である。
|
Research Products
(11 results)