2012 Fiscal Year Annual Research Report
興奮性細胞・抑制性細胞神経回路の前頭葉領野間分業と動物-環境間の関係創発
Publicly Offered Research
Project Area | The study on the neural dynamics for understanding communication in terms of complex hetero systems |
Project/Area Number |
24120703
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂本 一寛 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (80261569)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 前頭前野 / 同期発火 / 抑制性細胞 / 行動計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成24年度は、主に以下の二点につき、研究を推進した。 課題遂行中の動物の大脳皮質における神経細胞間の同期発火は、記録した細胞ペアの約10%程度にとどまることが知られている。これら同期発火を示す細胞は特別な性質を持つのか、それとも、単なる測定の問題なのかは不明である。ここでは、サル前頭前野の同期発火細胞群と非同期細胞群の抑制性細胞の含有比率を検討した。ナイーブな解析では、同期発火細胞群は、抑制性細胞を高い比率で含んだ。しかしながら、同期発火を評価する際、通常、かなり高い発火数(発火頻度)の基準値を満たす細胞のみが検定にかけられる。その点を考慮し、非同期細胞群にも同じ発火数の基準値をあてはめ、解析する細胞数を絞り込んだところ、抑制性細胞の含有比率に有意な差は認められなかった。これまでのin vitroの実験より、抑制性細胞は(同種の)他の抑制性細胞とギャップ結合で結合し強く同期発火ことが報告されている。しかしながら、今回のin vivoのデータの解析ではそれと対応する結果は得られなかった。このことは、in vivo覚醒状態の大脳皮質神経回路では、抑制性細胞群の安易な同期発火は極めて制限されていることを示唆している。 一方、新奇課題・形操作課題のサルへの訓練がある基準に達したので、そのパフォーマンスを解析した。特に、サルが操作順序を事前に計画しているかが行動に反映されているかどうかに着目し、解析を行った。課題で要求される操作は最短で2手であるが、3手以上かかった試行における反応時間を解析したところ、1)3手目の反応時間は2手目の反応時間より有意に伸びる、2)1手目で最短手操作ではない操作を行った後の2手目の反応時間は有意に伸びず、また、2手目でリカバリー操作を行うことはほとんどない、ことが判明した。このことは予め計画した2手操作を一気に行っていることを強く示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順序だった動作等、複雑な行動の計画を策定するためには、脳神経回路自身、複雑は活動パタンを生成できなければならない。複雑な活動パタンの生成メカニズムを探るには、神経回路の構成要素である興奮性細胞と抑制性細胞の性質と、同期発火や発火ゆらぎ等の複雑系に特有の現象との対応を検討する必要がある。この点、上述の通り、平成24年までの研究活動から深い示唆を得られた。また、新奇課題遂行中の皮質神経活動の生理学的記録のための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前頭前野だけでなく、運動前野の神経活動についても、興奮性細胞と抑制細胞の機能分化や、同期発火、発火ゆらぎの検討を通じ、そのダイナミクスを解明していく。また、新奇形操作課題遂行中の前頭葉神経活動ダイナミクスを、最新の記録・解析法を投入し解明していく。
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Research Products
(12 results)