2012 Fiscal Year Annual Research Report
サル間同調行動における脳内統合過程の解明
Publicly Offered Research
Project Area | The study on the neural dynamics for understanding communication in terms of complex hetero systems |
Project/Area Number |
24120720
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
長坂 泰勇 独立行政法人理化学研究所, 適応知性研究チーム, 研究員 (30339593)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 社会脳 / サル / 同期現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究年度では、ニホンザルに自発的な同期現象(ボタン押し課題)を生起させ、その現象が起こる際の行動を記録・解析した。解析の結果、1)向かい合ったサル同士のボタン押しが同期した。2)この同期は、互いにスピードを増減することで達成していた。3)したがって個体と相手の相互作用であることが示唆された。さらに4)ボタン押しの同期は互いのハーモニクスでも生じていたこと、聴覚刺激よりも視覚刺激や、視聴覚刺激の複合が同期を促進していることが明らかになった(Nagasaka et al., Scientific Reports, 2013)。 さらに本年度は、サルの同調行動を検討する上で、統制条件として設定するための、サル代替現実呈示システム(mSR)の製作を行った。代替現実とは、仮想現実(VR)とは異なり、それを体験しているヒトや動物が、現実と全く区別がつかず、あたかも自分が置かれている状況が、現実であると錯覚させるシステムである。ヒトではすでに成功を収め、さまざまな分野への応用が期待されている(Suzuki et al. 2012)。 製作されたmSRを実際に使用して、サルの行動を解析した。その結果、サルはmSRにすぐに適応せず、特殊な訓練が必要であった。すなわちmSRのライブ空間内で、視覚-運動-体性感覚の3つを統合させる訓練を数分間行うことによって、mSRに適応した。これは検討したいずれのサル(3頭)でも同様であった。その後、代替現実を呈示したところ、サルは実世界と全く同様な行動を示した。したがって、サル研究においてもSR技術が応用可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請当初に計画していた実験を終了し、行動実験について学会・紙面発表、さらにプレスリリースを本年度中に完了できたことは計画通りであった。 また本年度では、研究遂行中に生じた当初に計画していなかった新たな疑問について、「研究実績の概要」に示した研究装置を開発し、その評価と実験も順調に進んでいる。よって当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
ボタン押し課題を遂行中のサルの脳信号を記録し、解析する。記録するサルにはあらかじめ128chまたは256chのECoG電極を埋設する。電極は前頭前野から視覚野まで脳皮質を広く覆うことが可能であり、また内壁部にも留置が可能である。特に本研究で記録を予定している部位は、前頭前野、下前頭回(F5領域)と下頭頂葉、頭頂野、側頭-頭頂連結部等を予定している。これらの領域の神経活動を同期現象の有無によって比較する。また引き込み動作が生じる時間経過に伴った神経活動の変化を検討する。 サルが課題を行っている間、サルの前方に設置したモニター上に他個体(vMonkey)がボタン押しを遂行しているビデオクリップを実物大に投影する。ビデオクリップの再生速度は試行内で変化する。試行開始直後のvMonkeyのボタン押しの速度は、あらかじめ計測した被験個体のボタン押しの速さと同程度に設定される。試行開始後、被験個体のボタン押しのスピードが定常状態を保ったところで、vMonkeyのボタン押しのスピードを変化させる。さらにビデオクリップの提示法について映像と音声の提示、映像のみ提示、音声のみ提示の3条件を設定し、条件間で同期現象の生起とそれに伴う神経活動の変化を検討する さらに本検討では、上記の課題をビデオクリップのかわりに実際のサル2頭を向い合わせ、2頭のサルの脳の複数の脳領域を同時に記録することによって、2つの脳の間で起きている、相互作用を明らかにする。記録を予定している部位は、上記と同様であるが、必要に応じてECoGと脳深部電極を併用し、広範囲の領域からの記録を目指す。さらに記録された2つの脳の神経活動を解析することにより、社会的相互作用と脳間機能的ネットワークを明らかにする。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Higher-Order Partial Least Squares (HOPLS): A Generalized Multi-Linear Regression Method.2012
Author(s)
Zhao, Qibin, Caiafa, Cesar F., Mandic, Danilo, Chao, Zenas C., Nagasaka, Yasuo, Fujii, Naotaka, Zhang, Liqing, and Cichocki, Andrzej
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Journal Title
IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence
Volume: ―
Pages: ―
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Monkey see, Monkey sync.2013
Author(s)
Yasuo Nagasaka, Zenas C. Chao, Naomi Hasegawa, Tomonori Notoya, Naotaka Fujii
Organizer
Conference on Comparative Cognition
Place of Presentation
Florida, USA
Year and Date
2013-03-06 – 2013-03-09
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