2012 Fiscal Year Annual Research Report
光照射固体NMRによる光受容体膜タンパク質の活性中間体の構造機能相関の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological processes mediated by transient macromolecular complexes; New technology for visualizing physiologically metastable states. |
Project/Area Number |
24121709
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
内藤 晶 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (80172245)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光受容膜タンパク質 / トランスデューサー / 走光性 / 固体NMR / 光照射 / 中間体 / 光サイクル / 信号伝達機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
Pharaonis Phoborhodopsin (ppRあるいはSRII)は高度好塩好アルカリ性菌Natronomonus Pharaonisに存在する光受容膜タンパク質であり、負の走光性を制御する光受容体である。ppRは固有のトランスデューサー、pHtrIIと2:2複合体を形成して存在し、信号伝達機能を有している。本研究ではppRおよびppR-pHtrII複合体を用いて、光中間体の構造・運動性の変化を観測した。 本実験では光照射装置を組み込んだ固体NMR装置を開発し、光照射光源にはLED(520 nm, 50 mW)を用いた。試料管に試料を入れた後、光散乱を起こすことが可能なガラスキャップを試料管に挿入した。これにより、高効率の光照射が可能になった。 ppRのM-中間体の寿命は1.7 s と長いので、520 nmの光を連続照射すれば、M-中間体が捕捉される。実際ppR-pHtrII複合体ではM-中間体の捕捉に成功した。さらにこのM中間体は一種類ではなく少なくとも3種類のM中間体の存在が確認された。このM中間体が捕捉された後、520 nmから365 nmの光照射に切り替えたところ、M3のみ減衰が遅かったので、M3中間体は380 nmに吸収極大をもつM中間体ではなくN中間体と考えられる。 M-中間体ではThr204とTyr174で形成する水素結合の変化が信号伝達機能に重要であることが示されている。そこで、[1-13C]Tyr, [15N]Pro-ppR-pHtrII複合体の暗状態(G-状態)におけるTyr174由来の信号を観測したところ、174.6 ppmに信号が現れた。次に光照射状態(M-中間体)で信号を観測したところ、174.6 ppmの信号に広幅化が起こった。この結果はM中間体が複数存在することに対応して、タンパク質も複数の構造が存在することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) ローターに試料を入れた後、光散乱を起こすことが可能なガラスキャップをローターに挿入した。これにより、ローター内で高効率の光照射が可能になった。 2) D96N-bRにおいて、in-situ光照射固体NMRを用いてM-中間体の捕捉に成功した。またタンパク質側の構造変化についてもかなり変化することを観測した。 3) WT-bRについては緑色光を照射することにより、13-cis*なる新規の中間体を捕捉することに成功した。この中間体はこれまでに報告されていない新規の中間体であった。 4) In-situ光照射固体NMRを用いて、ppRおよびppR/pHtrII複合体についてM-中間体の捕捉に成功した。これによりM-中間体には複数の成分があることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ローター内での高効率の光照射が可能になったので、今後は多波長の光照射が可能なシステムに拡張する計画を立てている。 2) D96N-bRにおいてM-中間体の捕捉に成功したので、今後はタンパク質側の構造変化について詳細な情報を収集し、レチナールの光異性化に続くタンパク質の構造変化についての知見を得る。 3) WT-bRについて13-cis, 15-syn型レチナールは13-cis*なる中間体を形成することが明らかになったので、今後は子の中間体状態でのタンパク質側の変化についての知見を得る実験を行う。 4) ppRおよびppR/pHtrII複合体についてもM-中間体の捕捉に成功したので、今後はこの中間体状態でのタンパク質側の構造変化についての知見を得る実験を行う。
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Research Products
(18 results)