2012 Fiscal Year Annual Research Report
部位特異的光架橋法によるミトコンドリアトランスロケータの過渡的複合体の動態の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological processes mediated by transient macromolecular complexes; New technology for visualizing physiologically metastable states. |
Project/Area Number |
24121713
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
遠藤 斗志也 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70152014)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 酵母 / トランスロケータ / 部位特異的光架橋 / アセンブリー因子 / βバレル型膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
アセンブリー途上のTom22と過渡的に相互作用する因子の解析
酵母細胞内で目的タンパク質に部位特異的に光架橋性非天然アミノ酸BPA(ベンゾイルフェニルアラニン)を導入し,紫外線照射によって架橋を行うin vivo部位特異的光架橋法は,in vivoまたはオルガネラ中(in organello)という生理的条件下でタンパク質間相互作用を検出することができる優れた方法である。TOM40複合体の中心的サブユニットTom22の様々な部位にin vivo部位特異的光架橋法を適用し,Tom22を酵母細胞内で過剰発現すると,過剰発現しないときには見られない架橋産物が観察された。この架橋産物は発現を抑えると減少していくので,TOM40複合体に組み込まれる前に,一過的に生ずる架橋産物であると考えられる。すなわちこれらの架橋相手は,Tom22のアセンブリー途上で過渡的複合体を形成するアセンブリー因子である可能性がある。架橋産物の局在を調べたところ,一つはサイトゾル,もう一つはミトコンドリア外膜に存在した。サイトゾルの架橋産物の架橋相手は,Hsp70分子シャペロンであることがわかった。Tom22をミトコンドリアに標的化されるまで,サイトゾルで可溶性に保つ機能があると考えられる。外膜の架橋産物の架橋相手は2種類から成り,既知のトランスロケータ構成因子ではなかった。そこでこの架橋相手を質量スペクトル解析により同定したところ,一つは外膜の内在性膜タンパク質のポリン(Por1)であった。Por1を遺伝子破壊すると,Tom22のTOM40複合体へのアセンブリーは促進され,Tom40のアセンブリーは阻害された。また,これらのサブユニットのアセンブリーを担うSAM複合体が不安定化した。Por1はTOM40複合体から一時的に解離したTom22の安定性に関わることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tom22とアセンブリー過程で一過的に複合体を形成するアセンブリー因子の検出と同定については,順調な成果が得られた。すなわち,酵母細胞内でTom22自身を過剰発現して,過剰発現特異的な光架橋産物として,一過的な相互作用相手を検出することで, Tom22のアセンブリー因子候補の同定の見込みが立った。そのうちの一つがサイトゾルのシャペロンHsp70であったことは,この想定が正しい事を証明する。もう一つの因子がミトコンドリア外膜のチャネルタンパク質Por1であったことは意外であったが,これはPor1の新たな機能を示唆するものである。現在Por1が,Tom22のアセンブリー因子である可能性,具体的には何を行っているのかについて,検討を行っている。これらの成果は,膜タンパク質複合体構成サブユニットの生合成時に過渡的に相互作用するアセンブリー因子(やシャペロン)を検出する新しい方法論として,部位特異的光架橋法が有効であることを示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
Tom22がアセンブリー途上で形成する過渡的複合体の検出とその複合体の解析については,順調な成果が得られた。Por1が真のアセンブリー因子である可能性について,解析を継続する。また未同定のもう一つの外膜因子については,質量スペクトル解析による同定を試みる。
TOM40複合体中のTom22とTom40の配置の解析も進行中である。TOM40複合体のチャネル因子Tom40はβバレル構造をとると考えられており,Tom40チャネルがどのように開いて,基質タンパク質の膜貫通ヘリックスがラテラルに外膜に組み込まれるかは大きな謎であった。βバレル構造内部がチャネルであればN端とC端のβストランドが解離してチャネルを開く必要があり,Tom40オリゴマーが作るTom40の外側の間隙空間がチャネルとして機能するなら,オリゴマーが相対配置を変えてチャネルを開く必要がある。これらのモデルのどちらが正しいかを検証するには,Tom40の1次構造上のβストランドの位置を正確に決定し, βストランドがチャネルの内側または外側,いずれの面で基質タンパク質と接触するかを調べる必要がある。われわれは,Tom40はβバレルの外側でTom22と接触し,Tom22がTom40を束ねる糊の役割をしていることを見出している。そこでTom40の様々な部位にBPAを導入し,Tom22と光架橋される部分のマッピングを試みている。
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Research Products
(22 results)