2012 Fiscal Year Annual Research Report
常磁性プローブを利用した準安定な複合体の立体構造解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological processes mediated by transient macromolecular complexes; New technology for visualizing physiologically metastable states. |
Project/Area Number |
24121722
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
三島 正規 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70346310)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | NMR / 常磁性 / 複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
弱い相互作用によって過渡的に形成される遭遇複合体、準安定な複合体の構造解析には、特別な解析手法を用いた構造研究が必要であり、多次元NMRによる常磁性緩和効果(PRE)の観測や、relaxation dispersion法などが、有効な解析法として挙げられる。特に準安定な複合体の「立体構造を決定する」という観点からは、その距離情報が得られるPREの観測が有力な方法である。準安定な複合体の立体構造決定は、X線結晶構造解析等によって蓄積された、「安定な複合体」のスナップショットから機能を議論する過程で欠けている側面であり、生体分子の相互作用の、より一層の理解になくてはならない知見である。本研究では以下の2つのテーマに取り組んだ。 (1)転写コリプレッサーSHARPは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)複合体をリクルートすることで様々な場面での転写を抑制している。分子レベルでは、mRNA型のncRNAであるSRA等や、コリプレッサーであるSMRTと直接相互作用して転写を抑制することが明らかになっている。SHARPのC末端側に存在するSPOCドメインとリン酸化されたSMRTが複合体を形成するfast-exchange条件下で形成される準安定なSPOCドメイン/SMRTペプチド複合体の立体構造解析を行った。 (2)柔軟なマルチドメインタンパク質であるRho-kinaseやPKCにスピンラベルを導入して、スピンラベルからのPREを多次元NMRを用いて観測することで、長距離(約20オングストローム)の距離情報を十分収集し、構造計算を行い、弱い相互作用による自己阻害状態や過渡的に活性化状態にある立体構造を試みた。またキナーゼの足場として、タンパク質APO-AIにより再構成された脂質二重膜(ナノディスク)を用いて膜との相互作用の解析も試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SHARPのC末端側に存在するSPOCドメインとリン酸化されたSMRTが複合体の解析に関して、現在論文を投稿中である。またPKCのC1Aドメインの試料調製法を改良して、その立体構造を決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
SPOC/SMRT複合体については弱い複合体状態での立体構造解析を行う。 PKCに関しては、従来のNMR測定法では、分子量等の問題により解析が困難であるので、タンパク質の部分重水素化とメチルTROSYを用いて先鋭化させたNMR信号を観測し、さらにPREを観測することで、ドメイン間の相対配置に関する情報を取得する。
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