2013 Fiscal Year Annual Research Report
アンチリジンを含む元素ブロックを用いる機能性超分子ポリマーの創製
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
25102509
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小泉 武昭 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (60322674)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超分子 / 1,9,10-アンチリジン / 水素結合 / π-πスタッキング / 発光 / オルソゴナル相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度は、1,9,10-アンチリジンの構造を含むorthogonal相互作用が可能な元素ブロックの合成と、分光学的性質、特に発光特性について検討を行った。 目的とする元素ブロックを合成するために、ジベンゾアンチリジン(dbanth)のジクロロ体、dbanth-Cl2の合成を行った。dbanth-Cl2は、2-ブロモ-4-クロロトルエンを出発源料とし、5段階の過程で得られた。次に、dbanth-Cl2に対してフッ素置換芳香環の導入を試みたが、反応がほとんど進行せず、当初目的としていた化合物は得られなかった。そこで、広いπ系を持ち、目的とするπ-πスタッキングの形成に有利であると考えられるアントラセンを置換基として導入することを考えた。dnath-Cl2に対して9―アントラセニルボロン酸をPd触媒によるクロスカップリング法により導入することにより、Tweezers型の元素ブロック1を合成することに成功した。1は溶解性が低く、1,1,2,2-テトラクロロエタン(TCE)にのみ良好な溶解性を示した。1の発光スペクトルを測定したところ、濃度依存性があることがわかり、2.0×10^-5 Mよりも濃い条件ではエキシマー発光を示すと考えられる。1とヘキサフルオロベンゼン(2)およびトリニトロフルオレノン(3)との会合について紫外可視吸収スペクトルによる観測を行った。その結果、416 nmに新しい吸収が出現した。この現象についてさらなる実験を行なったが、再現性に乏しく、その原因については現在のところ明らかにできていない。一方、水素結合ドナー分子の合成を同時に行った。三重の水素結合を形成できる分子として、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-4-メチルフェノール (4)および1,8-ビス(3,5-ビス(ヒドロキシメチル)-4-ヒドロキシフェニル)オクタン (5)をそれぞれ合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は、アンチリジン誘導体の合成および分光学性質の解明、水素結合・π-πスタッキングの形成能について検討を行う予定であった。 目的とするアンチリジン含有元素ブロックの原料であるdbanth-Cl2は、5段階の過程を経て合成する。本化合物合成における各段階の反応条件の最適化にやや手間取り、目的物を得るために相当の時間を費やした。 当初計画していたアンチリジン誘導体は、2個のジベンゾアンチリジンユニットを2個の架橋芳香環で結合した環状分子を想定していた。しかしながら、フルオロ置換芳香族化合物とのクロスカップリング反応が上手く進行しないことが明らかになった。そこで、目的とするorthogonal相互作用を発現でき、かつ合成可能な分子としてTweezers型分子の合成を行うこととし、π-π相互作用を形成する部位のユニットとしてアントラセンを用いることとした。目的物である化合物1の合成に成功したが、溶媒に対する溶解性が悪いという問題が残存した。TCEに対して溶解することがわかったため、各種測定を行うことができたが、必ずしも充分とは言えず、新たな分子設計が必要であると考えられる。 1と2および3との反応によって紫外可視吸収スペクトルにおいて416 nmに新しい吸収が出現したことに関して、1と芳香族化合物の間に新しい相互作用が生じていると考え、検討を行ったが、上記のとおり再現性に乏しく、現時点では本事項については考慮に入れず研究を進行することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
アンチリジン誘導体の溶解性の向上を図る。平成25年度の研究によって、アンチリジン骨格を含む元素ブロック分子1が興味深い発光特性を示すこと、π-πスタッキングが可能であることを明らかにできた。しかしながら、溶解性の問題から、水素結合形成、π-πスタッキング形成に関する詳細な検討は出来ておらず、目的とするorthogonal超分子ポリマーの構築は困難であると予想される。そこで、今後の方策として、アンチリジンユニットに対する置換基の導入により、溶解性の向上を目指す。ピリジン環はイミン窒素に隣接した炭素に対してアルキルリチウムなどの試薬を使うことにより置換基を導入できることが知られていることから、この方法を応用することにより溶解性を持ったアンチリジン誘導体の合成を行う。合成した置換基を持つアンチリジン誘導体について、各種スペクトル測定により化学的性質を明らかにする。さらに、π-πスタッキングの形成について、核磁気共鳴および紫外可視吸収スペクトルによる測定を行い、上記1との相違について明らかにする。 水素結合形成のためのドナー分子4および5の合成に成功しているので、これらの分子とアンチリジン誘導体との水素結合形成能について、核磁気共鳴スペクトルを用いた検討を行い、会合の強さを明らかにする。さらに、両末端に水素結合ドナー部位を有する5を用いて超分子ポリマーの構築について検討し、生成物についてその性質を明らかにする。
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Research Products
(2 results)