2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナノチューブ構造を有する元素ブロックの空間を利用した光機能性材料の創出
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
25102518
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅山 有和 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30378806)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / グラフェン / フラーレン / 泳動電着 / 光電変換素子 / 貧溶媒注入法 |
Research Abstract |
平成25年度は、貧溶媒注入法により、フラーレン-グラフェンおよびフラーレン-ナノチューブ-グラフェンの二元および三元ナノカーボン複合体を作製し、その光電気化学特性評価を行った。 まず、3,5- (ジ-tert-ブチル)フェニル基をアリール付加反応により修飾した可溶性の化学変換グラフェン(f-CCG)を合成した。さらに、i) f-CCGとC60のo-ジクロロベンゼン(ODCB)混合溶液への貧溶媒(アセトニトリル)の注入、ii) FTO/SnO2電極上への泳動電着、による二段階手法により、C60-f-CCG複合膜で修飾された電極FTO/SnO2/(C60+f-CCG)mを得た。走査型電子顕微鏡でその膜構造を観察したところ、球状のC60単成分クラスターが密に充填された構造に加え、f-CCG上にC60クラスターが凝集している構造が確認された。また、FTO/SnO2/(C60+f-CCG)mを作用極として用い、湿式三極系で測定した光電流作用スペクトルでは、C60 : f-CCG = 1 : 0.4 (w/w)の時に最大で6.0%(400 nm)の外部量子収率を示した。これは、C60単成分クラスターを用いた系(5.1%)よりも有意に高くなっている。C60クラスターとグラフェンの相互作用により、酸化スズ電極への電子輸送の効率が向上したためと考えられる。 次に、i) C70、末端アルキル化単層カーボンナノチューブ(f-SWNT)の貧溶媒注入法によるクラスター化、ii) f-CCG溶液の添加、iii) FTO/SnO2電極上への泳動電着、による三段階手法により、(C70+f-SWNT+f-CCG)mで修飾された酸化スズ電極を得た。上記と同様に湿式三極系で光電変換特性評価を行ったところ、f-CCGの添加により光電流発生効率が低下することがわかった。これは、f-CCGが複合膜中でf-SWNT-C70クラスターによる多孔性ネットワーク構造の形成を阻害するためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、炭素などのナノチューブ構造を有する元素ブロックを土台として、電子受容性ユニットと電子供与性ユニットを配列させた超構造体を創出し、さらに、その構造体を電極上に薄膜化して高効率な光電変換素子を構築することを目的としている。平成25年度の研究では、一次元構造のナノチューブおよび二次元構造のグラフェンを、電子受容性分子であるフラーレンが配列する元素ブロックとしての機能評価を行うことができた。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、ジアゾニウム塩を用いたアリール付加反応を用いて、ポルフィリンなどの電子ドナーを、SWNTやC60@SWNT、グラフェンなどのナノカーボンにフェニレンをスペーサーとして連結した材料を創出してきた。SWNTおよびグラフェンを用いた場合には、ポルフィリンの励起一重項状態からエキシプレックスが生成し、電荷分離状態を生成することなく、基底状態に速やかに失活してしまうが、C60@SWNTを用いた場合には、収率は低いながらも電荷分離状態の形成が確認された。平成26年度の研究では、(i) SWNTに導入するアリール付加基の割合(修飾率)、(ii) スペーサーの構造(長さ、剛直性など)、(iii) SWNT上でのドナー分子の位置関係(孤立vs.二分子会合)、などを種々検討し、効率の良い電荷分離・電荷輸送、ひいては高効率な光電流発生の実現を目指す。つまり、(i)ではC60@SWNTの修飾率を増加させることで、SWNTの電子的特性が失われ、効率よく電荷分離を起こすことが知られているポルフィリンとフラーレンの相互作用が、SWNTの電子的影響を受けずに実現できると予想される。また(ii)では、スペーサーの長さを最適化することで、エキシプレックス状態からの電荷再結合を抑制し、電荷が解離する効率を最大化できると期待される。さらに申請者らは最近、SWNTやグラフェン上に連結された電子ドナーユニット同士が、強い相互作用を示す隣接した位置に存在する系と、相互作用しない離れた位置に存在する系を作り分ける手法の開発に成功した(論文未発表データ)。(iii)では、得られた孤立あるいは二分子会合状態での化学修飾SWNTの詳細な構造―物性相関を解明するとともに、その手法をピーポッドに応用する。
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Research Products
(13 results)