2013 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属元素ブロック共役高分子の不斉高次構造制御
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
25102522
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
三田 文雄 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (70262318)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高分子合成 / 重合触媒 / π共役高分子 / 光・電気機能 / ポリフェニレンエチニレン / 白金 / らせん / 会合 |
Research Abstract |
π共役高分子は,主鎖共役に基づく光・電気機能,剛直性に基づく気体透過性,高次構造形成能を示す。π共役高分子の性質は,分子量,共役二重結合の幾何構造,高次構造に大きく影響されることより,これらの精密制御は重要な研究課題である。今年度は,光学活性基を置換したポリフェニレンエチニレンならびに主鎖に白金を有するポリターフェニレンエチニレンの合成と高次構造制御の検討を実施した。 1.ポリフェニレンエチニレンの合成と高次構造制御:側鎖に親水性のオリゴエチレングリコール鎖を有するポリフェニレンエチニレンは,親水性溶媒中で折り畳みらせん構造を形成する。高次構造形成の駆動力は,主鎖・側鎖間の疎水・親水性バランスと,主鎖フェニレン間のπ-スタッキングである。報告者らは,D-ヒドロキシフェニルグリシン由来の長鎖アルキル基を含有ポリフェニレンエチニレンは,疎水性溶媒中で折り畳みらせん構造を形成することを見出した。 2.白金含有ポリフェニレンエチニレンの合成と高次構造制御:遷移金属はd,f軌道の電子に起因する多様な錯体形成能,光電気特性を有しており,高選択的有機反応触媒,光電気機能性材料に広く活用されている。遷移金属錯体を含有する共役高分子は,有機LED,有機薄膜太陽電池,非線形光学材料などへの応用が期待される。本研究では,D-ヒドロキシフェニルグリシン由来の新規な光学活性含白金共役高分子の合成と特性について検討した。ジヨード型光学活性モノマーと各種ホスフィン配位子を有するジエチニル型白金錯体モノマーのカップリング重合により対応するポリマーを得た。ポリマーはTHF中では明確なCDピークを示さなかったが,THF/MeOH = 1/9中では,主鎖吸収波長領域に分裂型のピークを示した。DLSを測定により94 nmの粒子の存在を確認できた。ポリマーはキラルな会合構造を形成していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は以下の通りであった。いずれの計画もおおむね実施でき,上記研究実績を出すことができており,研究計画はおおむね順調に進展していると言える。 ・各種光学活性ジエチニルモノマーの合成:各種光学活性ジエチニルモノマーを合成する。置換基の疎水性・親水性のバランスが,生成するポリマーの高次構造に大きな影響を及ぼすと予測されることから,疎水性の長鎖アルキル基,親水性のオリゴエチレングリコール基の他,無保護のカルボキシ基,アミノ基を有するモノマーも合成する。合成を計画しているモノマーはいずれも新規化合物のため,NMR,IR,マススペクトル,元素分析はもとより,可能なものについては単結晶X線構造解析によりコンホメーションも含めた構造決定を行い,後述のポリマーの高次構造解析に活用する。 ・リンカーとなる各種ジエチニルモノマーの合成:ジエチニルモノマーとジハロゲン化有機金属のカップリング重合で得られるポリマーの溶解性,共役長,モノマー単位間の結合の二面角によっては,ポリマーが期待した高次構造を形成しないことも考えられる。この対応として,様々な共役長および置換基を有するリンカーモノマーを合成し,カップリング重合の第三成分としてポリマーに導入して,そのコンホメーションの最適化を目指す。 ・ジエチニルモノマーとジハロゲン化有機金属化合物とのカップリング重合による含金属光学活性共役高分子の合成:ヨウ化銅を触媒に用いて,上記のジエチニルモノマーとジハロゲン化有機金属化合物のカップリング重合を検討する。モノマー仕込み濃度,触媒濃度,溶媒,重合時間を最適化し,高分子量のポリマーが高収率で得られる条件を確立する。
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Strategy for Future Research Activity |
・含金属光学活性共役元素ブロック高分子の構造解析:1H,13C,105Pd,195Pt NMR測定を実施し,含金属高分子の一次・二次構造に関する知見を収集する。サイズ排除クロマトグラフにより分子量および分子量分布を見積もり,NMR測定における末端基導入率,DLS測定による粒径分布から,会合体形成に関するデータを収集し,高次構造との関連について考察する。CDおよびUV-vis吸収スペクトルにより不斉高次構造を明らかにする。さらに,TD-DFT計算から励起状態の分子軌道のエネルギー準位を算出し,CDならびに,UV-visスペクトルを予測する。実測値との比較,コンホメーション解析へのフィードバックにより,溶液状態におけるコンホメーションを明らかにする。AFM,TEM測定により,固体状態での分子の配列を解析し,上記で得られる溶液中でのコンホメーションとの関連を解明する。 ・元素ブロック高分子の高次構造の外部刺激(温度,溶媒,pH)による制御:アミド,カルバメート構造を有するポリフェニレンエチニレンの高次構造は,分子内水素結合により安定化されていることを応募者は明らかにしている。本研究のポリマーも同様な分子内水素結合を形成すると予測されることから,加熱,極性溶媒の添加,酸・塩基の添加により,水素結合の度合いが変化して,コンホメーションに影響を与え,高次構造が変化すると期待される。これらの外部刺激の影響を精査し,らせんの巻き方向の反転,ランダム構造への転換,液晶性の発現などの高次構造の制御を目指す。 ・元素ブロック高分子のPL,EL特性の検討:得られるポリマーを用いて素子を作成し,PL,EL発光特性,ホール輸送特性を評価する。得られるデータをDFT計算から求められる分子軌道のエネルギー準位と共に解析し,より優れたPL,EL特性の発現が期待される元素ブロック高分子の設計にフィードバックする。
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Research Products
(20 results)