2013 Fiscal Year Annual Research Report
有機‐金属電子相関型多機能元素ブロックを基盤とする機能性高分子の創製
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
25102537
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
八木 繁幸 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40275277)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 元素ブロック / ジピリドフェナジン / π共役高分子 / 発光材料 / 高分子半導体 |
Research Abstract |
本研究課題では、d-π電子相関系機能性高分子の創出が可能な多機能元素ブロックとしてジピリド[3,2-a:2',3'-c]フェナジン(dppz)骨格を選択し、その電子アクセプター機能や金属配位能を利用して、発光性π共役高分子や高分子半導体などの機能性高分子の創出を目指している。平成25年度は発光材料を中心に、dppzを基盤とする機能物質の創出について検討した。 dppz骨格の電子アクセプター特性を利用して、強発光性ドナー-アクセプター-ドナー(D-A-D)型発色団の創出に成功した。dppz自体はほとんど発光しないが、10,13位もしくは11,12位にドナー性原子団を導入することで、分子内電荷移動(ICT)遷移に由来する効率的な蛍光が得られた。これらD-A-D型分子を配位子とする白金(II)錯体を合成し、発光特性を調べたところ、配位子よりも赤色シフトした発光が得られた。発光寿命測定から、観測された発光は蛍光に帰属され、ルイス酸である白金(II)がICTを促進したために赤色シフトすることがわかった。 2,7位にドナー性原子団を導入したdppz-白金(II)錯体も弱い蛍光を示すが、白金中心に結合する塩化物イオンをフェニルアセチリドに置換したところ、赤橙色のりん光が得られた。10,13位にドナー性原子団を導入したアナログ錯体では極めて弱い蛍光しか得られないことから、りん光性分子を得るにはドナー性原子団の導入位置が重要であることがわかった。 モノマーとしてdppz骨格を用い、フルオレン系π共役高分子の合成を試みた。重合度が低いためにオリゴマー程度の化合物しか得られなかったが、フィルム成膜性に優れるため、当該化合物を用いて非ドープ型有機電界発光素子(OLED)を作製した。素子性能は効率的でないものの、電圧印加によって発光材料由来の橙色電界発光を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、dppz骨格を基盤とする強発光性物質を創出し、ドナー性原子団の種類や導入位置を適宜選択することによって、青色から赤色まで発光を調節することに成功した。また、dppz-白金(II)錯体を基盤として強配位子場を与える第二配位子を用いることで、蛍光からりん光へのスイッチングにも成功した。さらには、dppz元素ブロックとフルオレン誘導体と共重合させることで発光性オリゴマーを合成し、当該物質を用いてOLEDの作製にも成功した。このように、dppzを構造基盤とする分子の発光特性について構造-機能相関を広く調査し、またそれらの応用面についても検討できたことは、本研究にとって大きな進展であると考えられる。また、招待講演や学会での講演賞も受けていることから、研究内容も外部から高く評価されていると考えられる。 一方で、dppz元素ブロックを高分子材料へと発展させる段階においては、発光性π共役オリゴマーを得ることには成功したものの、期待した程度の重合度が得られず、高分子量の物質への展開が現時点では停滞している。本件に関しては、研究計画当初から高分子合成で一定の開発期間を要することは想定しており、平成26年度に重合条件の最適化を行うことによって、研究期間内に目標を達成できるものと考えられる。 以上の理由から、本年度の成果としては一定の進捗を得ており、本研究は概ね予定通りの速度で進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、dppz骨格を基盤とする発光性元素ブロック高分子材料の創出とその発光デバイスへの応用に加え、dppz骨格を基盤とする半導体材料の創出について研究を展開する。平成25年度からの継続課題である発光性元素ブロック高分子の合成では、重合条件の最適化が研究進展のカギとなる。よって、研究計画の遅延が懸念される場合には、合成担当の研究協力者(大学院生)の増員によって研究の促進を図る。また、研究領域内の専門的知識を有する研究者と積極的に情報交換を行い、問題を克服するように努める。複数のテーマを効率的に進めるために、従来の研究協力者に加え、物性評価ならびにデバイス作製に従事する研究協力者(大学院生)を適宜増員する。物性やデバイスの評価結果を速やかに当該材料の分子設計にフィードバックできるように、合成担当の研究協力者と物性評価・デバイス作製担当の研究協力者との連携を密にすることで、研究の進捗に遅滞が生じないようにする。 本研究を遂行する上で生じた新規発明については、派生的な研究テーマであってもできる限り展開し、他の専門的知識が必要な場合は研究領域内での共同研究を積極的に行って発展させる。 以上の研究推進方策に基づいて得られた成果のうち、公開可能な内容については学会発表、講演や出版物を通して公表する。また、新規技術を含む知的財産については速やかに特許出願し、産学連携などを通して研究成果の社会還元に努める。
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