2013 Fiscal Year Annual Research Report
多軸鍛造Mg合金バルクナノメタルにおける疲労力学現象の解明と最適鍛造条件の提案
Publicly Offered Research
Project Area | Bulk Nanostructured Metals -New Metallurgy of Novel Structural Materials |
Project/Area Number |
25102706
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
植松 美彦 岐阜大学, 工学部, 教授 (80273580)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バルクナノメタル / 疲労 / マグネシウム合金 / き裂発生 / 微小き裂進展 |
Research Abstract |
多軸多段鍛造(MDF)をマグネシウム(Mg)合金AZ61に施し,バルクナノメタルを作製した.その際,MDFのパス数を3,6,8回とした.硬さ・引張り試験およびTEMによる組織観察の結果,MDFのパス回数が増えるほど,硬さと引張強度が上昇するとともに,結晶粒が微細化することを確認した.また8パス材について,EBSDを用いて最終鍛造面における結晶方位解析を行ったところ,極点図からは顕著な集合組織は認められなかった.バルクナノメタルの寸法制限があるため,引張り-引張り疲労試験用の小型試験片と試験片取り付けジグを新規に設計し,8パス材を用いて応力比R=0.1の片振り疲労試験を実施することで,基礎的なS-N曲線を取得するとともに,破断した試験片を用いてき裂発生起点の詳細な観察を行った.疲労試験の結果を修正グッドマンの式を用いてR=-1の両振り条件に補正し,MDFを施していないAZ61と比較したが,引張強度や硬さに比較すると疲労強度の大きな向上は認められなかった.また,疲労き裂発生起点近傍には数十μmの平坦部が認められた.この平坦部はMDF時に発生した欠陥,もしくは介在物と考えられ,それらを起点としてき裂が発生するために,十分な疲労強度が得られなかったと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MDFのパス回数が異なる材料の基礎的な機械的性質(硬さおよび引張り強さ)や組織様相の観察は今年度で完了した.またバルクナノメタルは強塑性加工で作製するために素材寸法に制限がある場合が多く,本研究におけるMDF材の寸法も全長が30mmとあまり大きくない.今年度は,素材寸法を考慮して最適な小型疲労試験片形状と試験片取り付けジグを新規に設計・作製し,取り付け部の改良を経て実際の疲労試験を可能にしたことは,目標を達成したと言える.まだ実際の疲労試験結果の数が十分ではないものの,EBSDによる集合組織観察と疲労き裂発生起点の詳細観察結果は,MDFによって誘起される集合組織が,必ずしも疲労き裂発生に関与していない可能性を示唆しており,今後の研究につながる疲労破壊機構の一部解明ができたという観点からも,目標を達成したと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は疲労試験が8パス材のみに限られていたため,今後は引き続き3パス材と6パス材の疲労試験を実施する予定である.MDF回数の多い8パス材では強い集合組織は認められなかったが,集合組織についてもパス回数依存性が存在することが予想される.また,8パス材では疲労き裂発生起点近傍に鍛造欠陥,もしくは介在物と思われる部分が確認された.これらの詳細は不明であるため,今後さらにき裂発生起点のEBSD解析やEDX解析を行う必要がある.集合組織のみでなく,疲労き裂発生の要因となり得るこれらの欠陥,あるいは介在物分布についてもMDFパス回数の依存性が予測される.これらのことを踏まえて,集合組織,MDFによる欠陥,介在物分布などのパス回数の依存性と疲労き裂発生機構を相関させることで,最適な鍛造条件を提案する予定である.
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