2013 Fiscal Year Annual Research Report
バルクナノ超弾性合金におけるマルテンサイト変態の結晶学と機能発現の起源
Publicly Offered Research
Project Area | Bulk Nanostructured Metals -New Metallurgy of Novel Structural Materials |
Project/Area Number |
25102707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西田 稔 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (90183540)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自己調整構造 / 超弾性 / 形状記憶効果 / 熱弾性マルテンサイト変態 / 粒界構造 / 走査電子顕微鏡 / 逆変態レリーフ / 低温圧延 |
Research Abstract |
バルクナノ(以下BN)超弾性合金におけるマルテンサイ(M)変態の結晶学と機能発現の起源に関して,課題①低ひずみ加工による結晶粒微細化と粒界制御が両立したBN-TiNi合金の創製,課題②M相(B19’構造)の自己調整構造に及ぼす母相(B2構造) 結晶粒径の影響を調査した. 課題①については,高周波溶解したTi50Ni48Fe2合金鋳造材を用い,1073 K-1 hの溶体化処理を施したものを初期材(母相平均粒径:約400μm)とした.低ひずみ加工という観点から圧下率を20%までに制限し,173から 673 Kの種々の温度で圧延後,再結晶処理を行ったところ,173 Kで圧延を行った試料において母相結晶粒径が0.6μmまで微細化され,Σ 27以下の対応粒界頻度も65.5%と高い値が得られた.これより,TiNi系合金において低温圧延を行うことで粒界性格を制御しつつ,結晶粒径を1μm以下に微細化することに成功した. 課題②では母相平均粒径を約400μm(試料A),約13μm(試料B),約4μm(試料C),課題①で得られた約0.6μm(試料D)に調製し,これらに生成するM相の自己調整構造をSEM内冷却及び逆変態レリーフによって観察・解析した.試料Aでは,長さ100~200μm に及ぶ2つの晶癖面兄弟晶(HPVs)から成るV字型の2HPVsクラスターが多数生成し,その内部を分割するように3角形状の3HPVsクラスターが認められた.試料Bでは,2HPVsクラスターの出現数,サイズはともに減少し,3HPVsクラスターの生成が支配的となった.試料Cでは,本合金の自己調整構造において理想形態と考えられる6角形状の6HPVsクラスターが多く観察された.試料Dでは, 2HPVsクラスターが交互に繋がったHerringbone組織を呈していた.これはBN-TiNi合金に特有の自己調整構造と考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように,課題①については圧下率20%程度の低温圧延という簡便な方法で粒界性格を制御したBN-TiNi合金の創製が可能となった.課題②については自己調整構造の形態が母相粒径に依存するという系統的な結果が得られた.また,BN-TiNiは加工硬化率が小さく,かつ,応力履歴の狭い超弾性ループ(応力-ひずみ曲線)を示すことを確認した.よって,本年度の研究目的はおおむね達成されたと判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
1) TiNi合金のM相の自己調整構造に及ぼす母相結晶粒径の影響をさらに系統的に調査し,M変態に関する幾何学的非線形理論による検証を行う.また,結晶粒径だけでなく粒界性格が自己調整構造に及ぼす影響についても検討する. 2) BN-TiNi合金を超弾性および形状記憶効果が発現する温度で引張あるいは圧縮試験を行い,応力-ひずみ曲線を解析する.特徴的な形状を持つ応力‐ひずみ曲線が得られた試料についてSEM内その場変形を行い,晶癖面および双晶(格子不変変形)界面の応力誘起移動の過程を連続観察する.さらにM相が長周期構造を持ちエネルギー貯蔵効率の高い応力‐ひずみ曲線を示すCu-Zn,Cu-Al-Mn超弾性合金についても同様の観察を行い,移動界面の結晶学的特徴や原子配列に着目してBN-TiNi系合金との比較を行なう. 3) TiNi以外の超弾性合金についても低温圧延によるBN化を調査し,M相の自己調整構造に及ぼす母相結晶粒径の影響,BN化による特性改善の可否を検討する.
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