2013 Fiscal Year Annual Research Report
バルクナノメタルの磁気・電気物性の新開拓と粒界制御への挑戦
Publicly Offered Research
Project Area | Bulk Nanostructured Metals -New Metallurgy of Novel Structural Materials |
Project/Area Number |
25102709
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
美藤 正樹 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60315108)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バルクナノメタル / ひずみ / 高圧力 / 超伝導体 / 磁気測定 |
Research Abstract |
本研究は、ナノサイズ(10nm以下)とバルク体(10μm以上)の中間サイズである“バルクナノメタル材料”の結晶粒・粒界を研究対象にし、像観察の手法では捉えにくい基礎物性を主に磁気測定を通じて顕在化させることを目的とする。 まず、交流磁気測定によるバルクナノ領域の磁区・磁壁ダイナミクスの開拓を目指した。これはバルクナノメタル材料の応用研究への足掛かりになるだけでなく、これまで敬遠されてきた非線形物理現象の研究に挑戦するものである。具体的には、「非線形磁化率の抽出手法の構築」と「非線形項を含む磁壁の運動方程式に基づく高速磁気履歴現象のシュミレーション」を通じて、磁区・磁壁ダイナミクスの研究の処方箋を構築した。螺旋磁性体MnPを研究対象にし、強磁性相中に存在する多様な磁気挙動の分析に成功した。 次に、NdFeBボンド磁石の高圧力実験において、応力による粒界制御に挑戦し、Dy無添加条件での究極的な保磁場上昇を目指した。ある組成の室温下では、加圧による約40%の保磁場上昇を実現した。不純物添加の多い組成、もしくは不純物添加の少ない組成でも元々保磁場が大きいものでは、圧力印加による保磁場の上積みは20%程度であった。現状、Dy無添加条件での室温におけるNdFeBボンド磁石の保磁場の操作限界は2テスラ程度と言えそうである。 さらに非磁性バルクナノメタルについては、交流磁気測定を通じて(非接触スタイルによる)マクロスコピックな側面からの電気伝導性を評価した。AlのARB加工材の実験では、ひずみ加工のサイクル数が及ぼす電気伝導度の変化には系統性を欠いたが、あるひずみ状態で熱処理を施し、粒径のサイズを変えた際の電気伝導度の温度変化には特徴的な変化を見出した。 また、超伝導体レニウムに対して、巨大ひずみ加工が及ぼす効果を、磁気測定・構造解析の側面より系統的に研究し、静水圧力効果とは対照的な実験結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バルクナノ領域の結晶粒・粒界を研究対象にする研究において、像観察の手法では捉えにくい基礎物性を磁気測定を通じて顕在化させようとする挑戦的な試みは着実な前進を見せており、「おおむね順調に進展している」と評価できる。 複雑な磁区形成機構を有する試料を対象に、磁区・磁壁ダイナミクスの研究の処方箋を構築できたことは大きな成果であり、今後、この方法をバルクナノメタル材に適用する。 次に、組成を異にする数種のDy無添加型NdFeBボンド磁石において、静水加圧による保磁場上昇に挑戦した。特に、不純物添加の非常に少ない組成の試料の実験を通じて、室温での保磁場の上限がおよそ2テスラであることを予想させる結果を得た。今後は温度特性を調べることで、自動車のモーター等での実用上大切な温度である500Kでの挙動を推測・評価する。 AlのARB加工材に対しては交流磁気測定を通じた非接触電気伝導測定を実施し、粒径のサイズを系統的に変えた際、電気伝導度の温度変化に特徴的な変化を見出したことは大きな成果である。今後は、ひずみ導入サイクルの異なる試料で同様の測定を行い、普遍的特徴を見出すことが次なる課題である。 また、超伝導体レニウムに対して、巨大ひずみ加工を及ぼすことで超伝導状態の安定度を操作することができることを見出したことは特筆すべき成果であり、磁気測定・構造解析に加え表面観察の結果を加えた総括的な解析が次の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
バルクナノ領域で結晶粒・粒界による新しい磁気挙動を発掘すべく、バルクナノメタル磁性材の交流磁気測定を実施し、非線形的な振る舞いに注目した新しい物理現象開拓に挑む。 次に、組成を異にする数種のDy無添加型NdFeBボンド磁石における静水加圧による保磁場上昇の挑戦を継続する。特に、静水加圧効果が顕著な組成に対しては、温度特性を調べることで、自動車のモーター等での実用上大切な温度である500Kでの挙動を推測・評価する。 ひずみ導入サイクルの異なるAlのARB加工材に対して、交流磁気測定を通じた非接触電気伝導測定を実施し、ひずみ導入バルクナノアルミ材における電気伝導度の結晶粒サイズ特性を明らかにする。 また、巨大ひずみ加工を施された超伝導体レニウムに対して、表面観察(TEM観察)を実施し、磁気測定・構造解析の結果を踏まえた総括的な解析を行う。
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Research Products
(8 results)